山根博士の海外モバイル通信

中国で折りたたみスマホ競争が激化、サムスンが高級モデル「W26」を発売

文●山根康宏 編集●ASCII

2025年11月12日 12時00分

 気がつけば、アップル以外の主力メーカー全社から出ている「折りたたみスマートフォン」。それらの中でも横に開くFoldタイプの製品が、今年も次々と登場しました。しかも薄型軽量化が一気に進み、一般的な“たためない”スマートフォンよりも軽いモデルも当たり前になりつつあります。

 このFoldモデルの競争が厳しい中国で、サムスンから高級モデルの「W26」が登場しました。

サムスンの心系天下W26

サムスンの中国独⾃ブランド「⼼系天下W」とは

 サムスンのスマホブランドといえばGalaxyですが、中国では「心系天下W」シリーズとして、独自のモデルが展開されています。中国キャリアの中国電信と協業したモデルで、高性能かつ高級デザインのモデルを毎年展開しています。2025年10月に発表された「W26」は「Galaxy Z Fold7」をベースに、ボディーの仕上げを高級にしたモデル。ちなみに、中国ではW26、Galaxy Fold7が併売されます。

Galaxy Z Fold7をベースにしたモデル

 Snapdragon 8 Eliteをチップセットに採用、ディスプレーは閉じたときが6.5型、開いたときが8型、バッテリーは4400mAh、カメラは広角2億画素、超広角1200万画素、望遠が1000万画素の3倍。Galaxy Z Fold7との違いはメモリーとストレージの構成で、W26は16GB+512GB、16GB+1TBという高容量モデルのみが販売されます。

メモリー構成のみを高めている

 本体はフレームをゴールド仕上げとし、背面には「心系天下」のロゴも入っています。背面はガラス仕上げでかなりの光沢感があります。指紋の跡は目立つのですが、それをふき取って、常に美しい状態で見せたくなるモデルです。

高級感は他社モデルを大きく引き離す

 カラバリはブラックとレッドの2色です。どちらの色も深みのある味わいであり、中華圏では特に好まれるデザインと言えるでしょう。とはいえ、ほかの地域でもこのカラーリング・仕上げを好む人は多いはず。

ブラック、レッド、どちらも高級感を十分感じられる

 実はこれまでの心系天下シリーズは、サムスンが折りたたみモデルを投入してから、FoldとFlipモデルの2種類が展開されてきました。昨年、2024年は「Galaxy Z Fold Special Edition」をベースにした「W25」と、「Galaxy Z Flip6」をベースにした「W25 Flip」が登場。それぞれのカラバリはなく、1色ずつの展開でした。

心系天下2024年発売モデルはFoldとFlipの2種類

 2025年はFlipをやめFoldだけになりましたが、これは中国での存在感を維持するとともに販売数、売り上げを高めるためでしょう。グローバルでは多くの国でスマートフォンの販売台数で1位や2位をキープしているサムスンですが、中国では地元メーカーにまったく太刀打ちできていません。しかし、折りたたみモデルだけはしっかりと存在感を示しています。

中国のサムスンストアの店頭ではW26が一番目立つ位置にある

「打倒ファーウェイ」へ! 競合を意識した価格と選択肢の拡充

 W26の価格は1万6999元、約36万8000円から。中国で折りたたみシェアトップのファーウェイの製品と比べると、Fold型の「Mate X6」が1万2999元(約28万1000円)から。カラバリは5色。3つ折り型の「Mate XTs Ultimate Design」が19999元(約43万3000円)からでカラバリは4色もあります。

 サムスンのGalaxy Fold7の中国モデルは3色しかなく(価格は13899元、約30万1000円から)、心系天下に2色を加えることで消費者の選択肢を広げようとしています。

ファーウェイに追いつくにはカラバリは必要だ

 そのファーウェイはMate X6の発売から1年がたち、新たなFoldモデルを展開予定。そうなるとサムスンだけではなくHONOR、OPPO、vivoなど他社にとっても大きな脅威になります。

 中国の折りたたみスマートフォン市場では「打倒ファーウェイ」を目指し各メーカーが競争をしており、W26シリーズも中国では大々的な売り込みを図っているのです。

筆者紹介───山根康宏


 香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど取材の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から100万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。

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