中国は深センにて、スマホメーカー・OPPOの最新鋭の製造拠点を見学しました。スマートフォン製造における超精密な自動化技術と、製品の信頼性を極限まで高めるための徹底的な品質管理を目の当たりにしたレポートをお届けします。
なお、工場内ではセキュリティー上の理由から、ほとんどの場所で写真および動画の撮影は固く禁止されていましたことを、あらかじめご了承ください(記事中の写真はほとんどがイメージです)。
OPPOの生産システムは、「不良品を受け取らない、製造しない、出荷しない」という「三不原則」を厳格に守っています。この哲学のもと、私たちはスマートフォンの中核となる基板製造を担う「SMT車間」、本体を組み上げる「総装車間」、そして信頼性を検証する「信頼性実験室」を巡りました。
スマホの頭脳「SMT工場」
超精密実装技術の舞台裏
最初に訪れたのは、SMT(Surface Mounted Technology:表面実装技術)工場です。ここはOPPOスマートフォンの基板(マザーボード)が製造される心臓部であり、7本の生産ラインが稼働し、年間1400万枚の基板供給能力を担っています。SMTは機械化、自動化、情報化された、高精度・高効率な主流の生産形態です。
基板製造のプロセスは、驚くほど精密かつ高度に自動化されていました。以前はひとつのラインにチェックする項目だけ人員がいたようですが、現在ではほぼオートメーションなので1~2人くらいになっています。
1. 清浄化とソルダペースト印刷:
まず、生の基板(PCB)は静電気やホコリを除去する洗浄機を通過し、清潔さが保証されます。次に、金属粉末の灰色混合物であるソルダペースト(はんだペースト)が印刷機によって正確な位置に転写されます。この印刷品質をチェックするのがSPI(ソルダペースト検査機)であり、ソルダペーストの厚さや体積などがOPPOの品質基準を満たしているかを検証します。
2. 高速チップ実装(マウンティング)
ここでは高速貼付機が導入されています。この設備はモジュール化されており、1時間に40~50万個以上の部品を実装できる能力を持ちます。最初に小型部品(コンデンサー、抵抗、インダクター)が貼られ、次にCPUやストレージなどの大型部品が実装されます。OPPOの基板に使われる最小の部品は0.4×0.2mmの「01005」と呼ばれるものです。
3. 品質保証とリフロー工程
すべての部品が正確に配置されたことを保証するため、実装後にはAOI(自動光学検査機)が導入されています。さらに、作業ミスを自動で識別し、従業員に即座に警告するシステムを自社開発しています。実装された基板は、次に窒素リフロー炉を通過します。設定温度は245度であり、ソルダペーストを溶融させたあとに冷却し、はんだ接合部を形成します。窒素(不活性ガス)を導入する目的は、高温下で酸素が存在することによる部品の酸化を防ぎ、ハンダ接合部の信頼性を高めるためとのことです。
4. 自動テストと保護加工
基板は両面実装に40分程度要したあと、自動テストラインへ送られます。テストは、高速回転するカッターで基板を個々の単板に分割する分板(デパネリング)から始まります。その後、ソフトウェアのダウンロード、キャリブレーション、Wi-Fiテスト、電流テストなどが含まれる、全面自動化されたテストが行なわれます。
OPPOは業界標準を上回るRFテスト基準を自社開発しており、たとえば4G/5G帯の送信電力テスト範囲を国家基準の3分の1に設定するなど、厳格な品質管理をしています。
最終工程のアクセサリー加工では、保護措置が施されます。これには、耐落下性や耐曲げ性を向上させるためのアンダーフィル接着剤、防水・耐衝突性を高めるための部品封止接着剤、そして放熱能力を高めるための熱伝導性シリコン接着剤の塗布が含まれます。
さらに防水、耐衝撃性、および電磁放射線遮蔽能力を高めるためのアクセサリーが自動で取り付けられます。
「人機協働」が迅速な製品化への道
次に、数百の部品が最終的なスマートフォンとして組み上げられるラインへと移動しました。このU字型生産ラインは、前加工、装配(アセンブリー)、テスト、包装の4つのセグメントに分かれています。
ここは、SMT車間とは異なり、「人機協働(ヒューマン・マシン・コラボレーション)」のモデルを採用しているのが特徴です。スマートフォンのモデルチェンジは非常に速く、機種ごとの構成や組み立ての細部が異なるため、機械よりも人間のほうが柔軟で迅速に対応できるからです。
1. 前加工と上蓋(うわぶた)の形成
前加工段階では、まずミドルフレームとスクリーンを組み合わせます。接着剤を塗布し、機器で両者を圧着した後、約3時間かけて保圧キャビネットに入れられ、接着剤を完全に固化させます。この後、作業員による目視検査で外観がチェックされます。
2. コア部品の組み込み
中核となる装配段では、通話音響のためのレシーバー(上スピーカー)や、着信、アラーム、ゲーム時のフィードバックなどに使うモーターが取り付けられます。そして、自撮り用のフロントカメラや、指紋認証のためのセンサーも組み込まれます。
この段階で、SMT車間で製造されたばかりの基板が上蓋(うわぶた)アセンブリにしっかりと取り付けられます。
3. 自動化された品質維持
多くの工程で自動化機器が活用されています。たとえば、バッテリー設置前に電流・電圧テストが行なわれ、モジュールが正常に機能しているか確認されます。バッテリー自体も、人工的な圧力の不均一性を避けるため、機械で均等に圧着されます。
特に印象的だったのは、オンラインねじ締め設備です。作業員によって力の強さが異なり、ねじ込みの深度が不均一になるのを防ぐため、機械によるねじ締めが採用されており、品質の安定性を保証しています。
4. 最終テストと包装
すべての組み立てが完了すると、携帯電話は一連のテストに進みます。これには、機能テスト、画像システム(フロント、リアカメラの撮影品質、色表示の分析)のテスト、信号受信テスト、オーディオテストなどが含まれます。
すべてのスマートフォンは、市場に出るまでに最低でも30回の検査を受けます。テストをパスした製品は包装段へ移り、付属品(イヤホン、ケーブル、アダプター、ケースなど)とともに梱包され、自動輸送ロボット(AGV)によって倉庫に運ばれ、最終的にユーザーの手に届きます。
180超の試練項目「信頼性実験室」ユーザー体験を超える保証
OPPOの製品が市場に出る前には、品質管理部門(QE)の信頼性実験室にて全方位的なテストが行なわれます。全体で180項目以上、原材料関連では1000項目を超えるテストが実施されます。テストは電気性能、構造(破壊的、構造プラグ)、環境老化に分類されます。
ここでは、代表的な構造テストと環境老化テストを紹介します。
【構造テスト:限界を超える耐久性の検証】
・タンブル(微小落下)テスト
ベッドやテーブルなど低めのところからの落下をシミュレートします。携帯電話は10cmの高さから、前面、背面、各側面に対して、合計1万4000回以上落下されるそうです。この間、動作と外観に異常がないことが求められます。
・自由落下テスト
大理石の床に向けて、携帯電話を一定の高さから自由に落下させます。最低基準は1mであり、国家標準の0.8mよりも高い設定です。六面、八角、十二辺のすべてから2回ずつ落下させていきます。最初のテスト成功後、さらに1.5mや1.8mといった高さからの落下テストも行なわれ、バッテリーの安全性と機能の信頼性が確認されます。
・USB耐久テスト
USBポートの寿命をテストするため、USBケーブルを2万回抜き差しします。また、ケーブルの寿命をチェックする線材揺動実験では、USBケーブルを10万回往復させて折れたり裂けたりしないかを試します。
・キー(ボタン)クリックテスト
使用頻度の高い電源ボタンは50万回、音量ボタンは20万回のクリックテストをします。
・ソフトプレス(軟圧)テスト
ユーザーがポケットに電話を入れたまましゃがんだり座ったりする状況をシミュレートします。デニム生地のポケットに入れた携帯電話を、シリコンケースを使って25kgの力で押し付けます。機能障害がなく、外観や構造に変形が生じないことが基準です。尻ポケットに入れるユーザーも多いですからね。
・ひねり(ねじれ)テスト
使用中に携帯電話がひねられる可能性を検証するため、一定の角度で携帯電話を750回ねじ曲げます。
【環境老化テスト:あらゆる環境への適応性】
・高低温テスト
極限環境下での保管温度は、最高75度、最低-40度まで設定されています。また、-15℃の低温下や55℃の高温下など、様々な環境で携帯電話の機能を動作させ、RF指数が正常範囲内であることを確認します。
・防水テスト/塩水噴霧テスト
雨天時の使用を想定したレインテスト(IPX2準拠、中程度の雨)や、湿気が多く、塩分を多く含む沿岸地域をシミュレートする塩水噴霧テストです。これらのテストは、内部部品の腐食や機能障害がないかを検証します。さらに、ビール、酸性飲料、コーヒー、洗剤、化粧品(日焼け止めなど)といった、日常生活で遭遇する物質に触れた場合のテストも実施されています。
・バッテリー関連テスト
すべてのOPPOバッテリーは、安全性と信頼性を確保するために、73項目以上の厳格なテストを受けます。
【まとめ】OPPO製品の品質は「徹底的な自動化」と
「限界突破の検証」によって保証される
OPPOの製造工場見学を通じて明らかになったのは、スマートフォンという精密機器の品質は、単なる組み立てではなく、超精密な部品実装技術と、ユーザーの期待を超える厳格な品質保証体制によって成り立っているということです。
SMT車間における高い自動化率は、製品の安定性と一貫性を保証しています。特に、自動ねじ締めや窒素リフローといった工程は、人間の作業のばらつきを排除し、品質の均一性を保つための、OPPOの強いこだわりを示していました。
そして、信頼性実験室での180項目以上にわたる限界突破のテストは、OPPOが製品を「壊れない」「安全である」というレベルを超えて、ユーザー体験全体を長期的に保証しようとする姿勢の表れです。国の最低基準を上回る落下テストの高さ設定や、日常生活を細かくシミュレートした各種耐久テストは、まさに「超える期待」(ユーザーの期待を超える)という品質哲学を体現しています。
OPPOの製造ラインは、最新技術を駆使した自動化と、迅速なモデルチェンジに対応する人機の柔軟な協働、そして極限の環境下での徹底的な検証という三位一体で、高品質なスマートフォンを世界に送り出しているのです。
































