荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ”

動画版チェキで撮る「時をかける猫」 うちの猫が昭和にタイムスリップ!?

文●荻窪 圭/猫写真家 編集●ASCII

2026年02月26日 12時00分

設定は1960年代。当時の8mmフィルムで撮ったヒトコマのような、うちの黒猫「あめ」の大あくび。8mmフィルムっぽいざらつきがたまらない。2026年2月 富士フイルム instax mini Evo Cinema

スマホ時代だからこそ刺さる
「画質よりエモさ」なデジタルチェキ

 今の時代、誰もが簡単にきれいな写真を撮れるスマホを持っているせいか、そこから外れた個性的な……ロークオリティというかローファイというか、「画質よりエモさ」「画質より体験」重視なカメラがウケるようになってきたのが面白いなと思うのである。セカンドカメラだからできる冒険って感じ。

 そんな中、今一番の注目は富士フイルムの「instax mini Evo Cinema」。乱暴にいえば、中に小さなデジカメが入っており、それで撮った写真をチェキプリントする「デジタルチェキ!」のシネマスタイル版だ。

 往年の8mmフィルムカメラがモチーフだが、もはや「フジカシングル8」なんて知ってる人は還暦を迎えてるレベルなのでアレだけど、そういう8mmフィルムを使った民生向けの動画カメラがあったのである。今から61年前……なんと1965年の発売だ。

 そのスタイルが60年たって復活するのだから面白い。しかも、ここまでやっちゃっていいの? と唸ってしまったほどの凝りようなのである。あまりに面白いので猫を撮りまくってみた。

縦長の「instax mini Evo Cinema」。ちょっとグリップ部が太いのはinstax miniフィルムが入っているから。大きなダイヤルは「ジダイヤル」。1930から2020まで10種類ある

 撮影するときはこんな感じ。なんかめっちゃ楽しそうでしょ。右手にぎゅっと持って、猫に近づいていって小さなモニターを見ながらパシャッと撮る。右手に持って小さなモニターを見ながら撮るのが、猫を狙ってるぜ感があっていいのだ。

instax mini Evo Cinemaで猫を撮影中。この姿を見るだけで、楽しそうでしょ。画面は「2000年」設定のもの。初期のデジカメ風フレームだ

 この画像を見てわかるとおり、中身はデジタル版のチェキ! なので画像は縦型。動画も縦位置で撮る仕様だ。さらに、わけわかんないのが「ジダイヤル」(時代+ダイヤルの造語ですな)。レトロ系エフェクト自体は珍しくないのだけど、それを「時代区分」で表現し、その時代を彷彿とさせるフレームも用意してきたのだ。

 フレームをオンにして撮るとジダイを味わえる。用意された「時代」は1930年代から2020年代まで10年ごとに10種類。冒頭写真は1960年代もの。時代的に「フジカシングル8」……つまり当時8mmフィルムで撮った映画のヒトコマって感じだ。ノイズが多かったりディテールがもやもやだったりするのが当時の8mmフィルムっぽい。

 せっかくなので、さらにさかのぼって1930年の写真からいこう。ちょっと暗くてざらついた白黒写真が、初期のモノクロ映画の絵面っぽくていい。

1930年代のうちのテトラ。中心の十字は当時のカメラのファインダーを模したフレームだ。2026年2月 富士フイルム instax mini Evo Cinema

 1940年はカラー。カラー映画が徐々に普及し始めた頃か。色が浅くて古さを感じるのがいい。

ちょっと色が濁っていてコントラストが低いのが初期のカラーフィルムっぽい。2026年2月 富士フイルム instax mini Evo Cinema

 1950年はモノクロ、というより白黒。当時の白黒テレビのイメージだろう。

走査線を模したと思われるラインが入っていたり四隅が丸い辺りが白黒テレビっぽい。2026年2月 富士フイルム instax mini Evo Cinema

 1970年はカラーテレビ。1980年は映像ではなく写真。80年代、コンパクトカメラがこぞって時計を内蔵し、写真の片隅に撮影日を刻印するのが大流行したのは記憶に新しい(いや新しくない)。

昭和っぽいうちの黒猫「あめ」。左下のオレンジ色の日付が当時を思い出させてくれる。「オートデート」機能とか言われてた。2026年2月 富士フイルム instax mini Evo Cinema

 1990年は、当時流行した8mmビデオカメラのファインダーか。8mmビデオカメラが登場し、大流行したのだ。まさにその頃の画質と画面表示。なお、よく見ると2025と刻印されてるけど……それはわたしがバカで日時設定時に1年間違えたからです。気づかなかったことにしてください。

90年代は小型で持ち歩きやすい8mmビデオが大流行。写りもその頃のビデオっぽい。2026年2月 富士フイルム instax mini Evo Cinema

 2000年はコンパクトデジカメの時代だ。デジカメの撮影画面っぽいデザインのフレームとなる。

 じゃあ2010年は何か。ライブ配信なのだった。確かにライブ配信がポピュラーになってきたのは2010年代だ。

左上にLIVEと入ってる。2010年代はライブ配信の時代だ。なのでそれっぽく遊ぶ子猫の姿を配信するテイで撮ってみた。2026年2月 富士フイルム instax mini Evo Cinema

 一番新しいのは2020年代(つまり現代だ)の写真を。フレームは画面を三分割するガイドだけというシンプルなもので、現在のデジタルカメラの素直な写りという感じに落ち着くのだった。

2020年設定で。普通にきれいに撮れるのだが、写りが普通すぎて一番使わないかもしれない。2026年2月 富士フイルム instax mini Evo Cinema

 こういうカメラを思いつく人もヘンだけど(もちろん褒めてる)、実際にここまでこだわって作っちゃったのもヘンだし(当然褒めてる)、片手で持って小さなモニターを観ながら撮るのが意外に楽しいってのもヘンだ。

 でもって、これで撮れるいろんな時代の写真はチェキ! プリントしたときに一番雰囲気が出るセッティングになっている。たくさんプリントしてそう思った。

 だから飼い猫をわざとレトロに撮ってプリントしまくって、いろんな時代に送り込んで、気づいたらフィルム代に頭を抱えるってのが一番いい遊び方かと思います。

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筆者紹介─荻窪 圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系フリーライター兼猫カメラマン。今はカメラやスマホ関連が中心で毎月何かしらのデジカメをレビューするかたわら、趣味が高じて自転車の記事や古地図を使った街歩きのガイド、歴史散歩本の執筆も手がける。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社 知恵の森文庫)、『東京「多叉路」散歩』(淡交社)、『古地図と地形図で発見! 鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)など多数。Instagramのアカウントは ogikubokeiで、主にiPhoneで撮った猫写真を上げている。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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