MWC Barcelona 2026レポート

Snapdragonがウェアラブル端末をググッと高性能化! 「Snapdaragon Wear Elite」をクアルコムが発表

文●山根康宏 編集●ASCII

2026年03月05日 19時30分

 クアルコムはMWC 2026にて、「The Rise of Personal AI」と題した基調講演を実施。ウェアラブルデバイス向けの新しいチップセット「Snapdragon Wear Elite」を発表し、パートナー企業となるサムスン電子とモトローラからも対応予定についてアナウンスが行なわれた。

クアルコムの基調講演「The Rise of Personal AI」

ウェアラブルデバイス向けの最新チップセット

 クアルコムのSnapdragon Wearシリーズはウェアラブルデバイス向けに開発されたチップセットだ。今回発表されたSnapdragon Wear Eliteは、シリーズで初のEliteの名前を冠したモデルとなる。同社のPersonal&Wearable AI部門SVP&GMのディノ・ベッキス(Dino Bekis)氏は、Snapdragon Wear Eliteがクアルコム史上最も先進的なフラッグシッププラットフォームであり、従来のウェアラブル向けチップとは一線を画し、オンデバイスAI、圧倒的なパフォーマンス、長時間のバッテリー駆動、そして先進の接続性を統合した、次世代のパーソナルAIデバイスのための基盤と説明した。

Snapdragon Wear Eliteを発表したクアルコムのディノ・ベッキス氏

 Snapdragon Wear Eliteは、ウェアラブルプラットフォームとして初めて3nmプロセスノードを採用し、超小型デバイスにおける最高クラスの効率性を実現している。CPUは新しい5コアアーキテクチャを搭載し、シングルスレッド性能は従来比で5倍に向上。これにより、アプリの起動速度やシステムのレスポンスが劇的に改善されている。

 GPUは次世代のAdreno GPUを搭載し低電圧ながらグラフィックス性能が7倍に向上。リッチなビジュアルや滑らかなアニメーション、高度な常時表示ディスプレイをバッテリーを犠牲にすることなく実現する。NPUはスマートフォン向けに実績のあるNPU技術をウェアラブル向けにスケールダウンしたHexagon NPUを初搭載。最大20億パラメータのAIモデルをオンデバイスで実行可能にし、クラウドに頼ることなくリアルタイムの知能を提供する。

 さらに次世代eNPUにより オーディオ、音声処理、文脈理解などのタスクを、超低消費電力でバックグラウンドにて継続的に実行する。これにより、常にユーザーの状況を理解し、プライバシーを保護した状態で適応する「常時オンのAI」を可能にする。

ウェアラブルデバイスに特化したCPU、GPU、NPUを搭載

 このようにSnapdragon Wear EliteはAIを単なる付け足しの機能ではなく、プラットフォームの根幹として設計することでそして強力なオンデバイスAIを実現したのが最大の特徴だ。ユーザーの記憶や好み、健康データなどを学習する「デジタルツイン」のような存在となり、メモの自動インデックス化、自律的なスケジュール調整、予防的な健康サポートなどを提供するパーソナルAIを実現できる。

 また、ウェアラブルデバイス向けに特化しており、バッテリー性能は「数時間ではなく、数日間使い続けられること」を理念に設計。駆動時間は前世代と比較して、日常的な使用で最大30%向上した。さらに新しい急速充電技術により、わずか10分で50%までの充電が可能。これは従来比2倍の速度だ。

 接続性についてはウェアラブル向けとし、最も包括的な接続スイートを統合。マイクロパワーWi-FiはBluetooth並みの低消費電力で、常時Wi-Fi接続を可能にする。5G RedCapによる低電力な5Gセルラー接続、セルラー圏外でも緊急メッセージを送れるNB-NTN衛星通信にも対応。Bluetooth 6.0、高精度な位置情報を実現するデュアル周波数GNSSも搭載する。

衛星通信にも対応、豊富な接続スイート

グーグル、サムスン、モトローラの代表が登壇
Snapdragon Wear Eliteの可能性を語る

 Snapdragon Wear Eliteはこのように新しいウェアラブルデバイス向けのプラットフォームであり、その成功のためには技術だけでなく、深い繋がりを持つ強固なエコシステムが不可欠である。世界中からすでに多くの世界中のパートナーが本チップセットを採用する製品の評価や開発が積極的に進められて、新たな形状やユースケースの創出に取り組んでいるとのこと。この協力体制こそがプラットフォームを実際の製品へと昇華させ、優れた体験を生み出す原動力になる。基調講演にはパートナーとして、3社の代表も登壇した。

 グーグルのWear OS by Google部門のVP, GMであるビョルン・ケルバーン(Bjorn Kjelburn)氏はSnapdragon Wear Eliteの性能を最大限に引き出すWear OSの進化を説明。OSにGeminiを統合し、スマートウォッチがユーザーを深く理解する「知的なシステム」へと昇華できる。また、Snapdragon Wear EliteのオンデバイスAIを最適化し、音声からアクションへの変換などを高速化。クアルコムとの密接な連携により、より自然で応答性の高い次世代のウェアラブル体験を提供すると述べた。

Wear OSの進化を語るグーグルのビョルン・ケルバーン氏

 サムスンのMobile eXperience Business部門のExecutive Vice President、ソン・インカン(Song Inkang)氏はクアルコムとの長年にわたる提携を強調。次世代のGalaxy WatchにSnapdragon Wear Eliteを搭載すると発表した。Galaxy Watchは2013年の最初のモデル以来、睡眠や活動量を管理するウェルネス・コーチへと進化してきた。Snapdragon Wear Eliteの採用によりAIを活用したエネルギー・スコアや予防ケア機能をさらに強化し、よりスムーズで効率的な包括的ヘルスケア体験を提供すると説明した。

Galaxy Watchの次モデルにSnapdragon Wear Elite採用を発表したサムスンのソン・インカン氏

 モトローラのVP of Strategy and CMO、フランソワ・ラフラム(Francois Laflamme)氏はクアルコムとの提携を背景に、ウェアラブルを単なるアクセサリーから「文脈を理解するAIコンパニオン」へと進化させる構想を語った。その象徴がコンセプトモデル「Project Maxwell」である。ユーザーが見ているポスターの内容をAIが理解し、音声指示でチケット購入まで完結するユースケースを紹介。Snapdragon Wear EliteのAI能力が、ユーザーの意図を先回りして助ける真のパートナーを実現すると強調した。

Project Maxwellを胸につけたモトローラのフランソワ・ラフラム氏

 Snapdragon Wear Eliteは単一の製品ではなく、多様なOSやフォームファクター(ウォッチ、ピン、メガネ、リングなど)に対応するオープンなエコシステムだ。ウェアラブル端末は今後、単なるアクセサリーからユーザーの意図を先回りして助ける「真のパートナー」へと進化し、日常生活をより便利にしながら、生産性と創造性を高めてくれる存在へと変貌していくだろう。

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