MWC Barcelona 2026が開幕した3月2日、NTTドコモはパーソナルAIエージェント「SyncMe」(シンクミー)を正式に発表した。同日から先行モニター5000人の募集を開始し、2026年春ごろにパイロット版を公開、同年夏ごろに全ユーザーへのサービス提供を予定する。
NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー マーケティングメディア部長の道上禄可氏、同エンタメマーケティング担当部長の浜田 尚氏、R&D戦略部 AI・エージェント担当主査の竹花幸伸氏に話を聞いた。
ワラビーと鳩が出迎える「寄り添うAI」
SyncMeを起動すると、「ワラピィ」と「ヨミドーリ」の2体のキャラクターが現れる。ポケモンのピカチュウなどを手がけたイラストレーター、にしだあつこ氏のデザインだ。ワラビーをモチーフにしたワラピィが日常会話でユーザーに寄り添い、鳩をモチーフにしたヨミドーリがバックグラウンドで情報を集めてくる。
2体に役割を分けたのには理由がある。「寄り添うキャラクターが役に立ちすぎると、急に頭良くなりすぎる感じになってしまう」と浜田氏は話す。親しみやすさを損なわずに実用性も確保するための構造だ。使い込むほどモーションが増え、会話のトーンもフランクになっていく。
ただしAIの学習精度とは切り離して設計している。将来はキャラなしモードも設定できるようにする予定で、シニア層など幅広い世代への対応も考えている。
my daizでやりきれなかったことを生成AIで
ドコモがAIエージェントでユーザーの生活をサポートするという構想は、2008年のiコンシェルまでさかのぼる。SyncMeはその再挑戦だ。前田義晃社長直下で約1年前に始動し、25年度中のサービス開始を目指して開発を進めてきた。
前身のmy daizは「シナリオ対話型のモデルで、すべてのことにシナリオを作るのは不可能だった」と道上氏は話す。天気や交通情報レベルの簡単な会話には対応できても、自由な相談には答えられなかった。「生成AIですべてのことに答えられるようになり、幅が全然変わった」という。
決済と位置情報で、使い始めから精度が出る
ChatGPTやGeminiは、使い始めにはユーザーのことを何も知らない。SyncMeはここにdアカウントのデータを持ち込む。浜田氏は「コールドスタートを防いで、ちゃんとした答えが返ってくる体験から相談の回数が増えていく。それがまた精度を上げる」と言う。
精度の核になるのは、決済データと位置情報だと竹花氏は明かす。「決済があると、どういった店舗で購買されるかから興味が分かってくる。ライフスタイルやご家庭の構成も推測できる」。
初回起動時には「#今のワタシ診断」として、自分を表す写真20枚をギャラリーから選ぶ。写真のメタデータとdアカウントの情報を掛け合わせて、セットアップ直後からパーソナライズが効いた状態で使い始められる。
「近くのおすすめレストランは?」と聞いたとき、肉好きな人と魚好きな人では出てくる店が変わる。dアカウントのデータが薄いユーザーは類似プロファイルのデータから好みを補完する。
基本無料、キャリア不問でスタート
料金は基本無料でスタートする。キャラクターの着せ替えなどアイテム課金やサブスクリプションの導入を検討しており、使い放題に歯止めをかける方策は課題だと道上氏は認める。「最初から広告モデルを入れようということはない。ユーザーのニーズを最優先にする」(浜田氏)。
キャリアを問わず、dアカウントさえあれば使える。対応環境はAndroid 13以上、iOS 16.3以上。
内部の仕組みについては、浜田氏によるとGoogleやOpenAI、NTTグループのtsuzumiに代表されるLLMを用途に応じて使い分けているという。具体的な採用モデルは非公開だ。現状はテキスト中心で、音声入力には対応済みだがキャラクターの音声出力はパイロット版では未実装だ。
先行モニターは最大5000人を募集中で、3回のアンケートに答えた参加者には期間・用途限定のdポイント1000ポイントが付与される。
将来は専用デバイスも、企業エージェントとの連携も
MWCのブースには将来構想を示すコンセプトモデルも展示した。スマートフォンにAIエージェントが常駐する世界では、ロック解除した瞬間にカード形式で今やるべき情報が優先順位順に並ぶ。自分でアプリを探して起動する手間がなくなり、通知に気を散らされることもない。「ホームアプリがこういうかたちになっていくんじゃないか」という展示だ。
スマホを超えた展開も描いている。「2年先にはどういう生活になっているか」と浜田氏が語り始めたのが、持ち歩きやすい小型デバイスや家庭内の据え置き型ロボットへの展開だ。シーンに応じてデバイスをまたいで連携し、たとえば読書をしようとすると照明をリラックスできる色に変えブラインドを閉める、といった先回り動作も構想している。
企業エージェントとの連携も視野に入る。ヘアサロンのエージェントと繋がってスタイルの提案を受ける、友人のエージェントからタクシー相乗りの提案が届く、といったシナリオをデモで表現していた。代理購買は現行の法制度上まだ難しいが、購入直前まで誘導することはできる。「粛々と機能を拡張していく」と浜田氏は言い、Googleカレンダーとの連携なども開発中だと明かした。



























