スマートフォンの通信が急に遅くなったり、人が多い場所で繋がりにくくなったりして、イライラした経験はありませんか。MWC26で開催されたKDDIのネットワークインフラに関する記者説明会では、そんな私たちの不満を解消するかもしれない最新技術と、今後の戦略が語られました。
KDDI コア技術統括本部 技術企画本部 副本部長 佐藤卓郎氏に聞いた、KDDIが描く未来のネットワークを紹介します。
職人技をAIが代替
パラメーター設定時間を90%以上削減
KDDIはネットワークの運用にAIを本格的に導入しています。これまでは、基地局のアンテナの角度などの細かいパラメーター調整は、人間の手で行なっていました。佐藤氏は「理想的にはもっと細かくチューニングができるのが理想だが、人の手だと限界がある」と語ります。そこで分散強化学習というAI技術を活用したところ、「パラメーターを考える時間を90%以上も削ることができた」とその成果を強調しました。
さらに、障害発生時の対応も進化しています。佐藤氏は「ハードウェアの故障であれば、どういう原因で故障したかの分析から、パートナー企業への発注まで含めて自動化するところまで来ている」と明かしました。AIが24時間体制でネットワークを見守り、人の手を介さずに最適な状態に調整してくれるから、私たちはより安定した通信を利用できているというワケです。
課金でサクサク? 「通信のファーストクラス」構想
もう1つ注目したいのが、5Gの真の力を引き出すスタンドアローン方式(5G SA)の拡大と、それを活かした「ネットワークスライシング」技術です。佐藤氏によると「今年度末までに人口カバー率90%の達成を目指している」とのこと。
この基盤を活かし、将来的に一般ユーザー向けにも画期的なサービスが検討されています。佐藤氏は海外の通信会社の事例などを挙げながら、「フライトと一緒で、エコノミークラスとビジネスクラス、ファーストクラスのように、いただいたお金に対して体感が変わるプレミアムなサービスをお届けするコンセンプトは面白い」と語りました。
これは、現在auが「au 5G Fast Lane」として展開しているサービスに似ていますが、追加料金を支払うことで、混雑している場所や時間帯でも専用レーンを使って動画をすぐにダウンロードできたり、オンラインゲームを遅延なく快適にプレイできたりする構想です。佐藤氏も「日本の一般のお客さまにもニーズはある」と分析しており、今後の展開が非常に楽しみな分野です。
生成AI時代を見据えた上り通信とミリ波の強化
これから本格化するAI時代に向けて、ネットワークに求められる役割も変化しています。これまではデータをダウンロードする「下り通信」が圧倒的な割合を占めていましたが、生成AIの普及などにより、ユーザー側からデータを送信する「上り通信」のトラフィックが急増しています。
このボトルネックを解消するため、KDDIが保有する「2.3GHz帯」という特殊な周波数を活用しようとしています。「他社と上り下りの比率を合わせる必要がないため、上り3対下り1のように上り通信を分厚く設定することが可能です」と佐藤氏は説明した。
また、超高速通信を実現する「ミリ波」の展開にも本腰を入れています。新宿エリアの商用環境でのデモでは、動画配信サービスのドラマ1シリーズ約10話分が、画面をタップした瞬間にわずか1秒ほどでダウンロード完了するという驚異的なパフォーマンスを披露しました。とはいえ、ミリ波は非常に直進性が強いので、スタジアムやイベント会場といった、限定的に人が多く集まる場所での展開を進めています。
また、対応端末が増えないと意味がないので、専用の中継器であるレピーターなどの設備を拡充し、「ミリ波に対応したスマートフォンの普及を促していく」とのことです。
スコアよりも「実際の使いやすさ」を最優先に
通信業界では第三者機関による通信速度などの評価スコアが注目されがちですが、KDDIのスタンスは明確です。質疑応答のなかで佐藤氏は「Opensignalなどの指標に最適化して開発しているわけではない」と断言しました。
「もちろん高い評価を得ることは重要」としつつも、自社で収集した実際のユーザーの体感データに基づき、お客さまが本当に使いやすいと感じるネットワークの構築を優先する姿勢を示しています。佐藤氏の「自分たちのデータとOpensignalのデータが相反するのなら、自分たちのデータを信じる」という言葉からは、ネットワーク担当としての自信が感じられました。
KDDIはミリ波と呼ばれる高速通信のエリア拡大に向けて、小型のリピーターを活用する工夫や、特殊な周波数を用いて上りの通信速度を引き上げる柔軟な運用など、地道な改善も続けています。AI技術と新しい通信サービスによって、私たちのスマートフォン生活がより快適でストレスのないものへと進化することを期待しましょう。




























