ほとんどのmicroSDカードは、大きいCマークの中に数字が記載された「スピードクラス」のロゴがプリントされている。これは、microSDで映像を録画する際の連続書き込み速度が毎秒10MB以上という意味だ。スピードクラスはClass 10のほか、Class 6、Class 4、Class 2がある。
ただし、スピードクラスでは書き込みが毎秒10MB以上という情報しかなく、それ以上の速度がわからない。そこで、より速い書き込み速度を示す表記が「UHSスピードクラス」「ビデオスピードクラス」だ。
「UHSスピードクラス」は、大きいUマークのなかに数字が記載されたロゴだ。microSDと利用する対応機器が、データをより高速にやりとりするUHS-IまたはUHS-IIという転送規格を利用した場合の最低書き込み速度を示している。U1だと毎秒10MB、U3だと毎秒30MBとなる。最新スマホやデジタル機器は、おおむねUHS-Iに対応している。
「ビデオスピードクラス」は、4Kや8K映像の録画が可能かを示す数値だ。現在V6、V10、V30、V60、V90という表記があり、4K映像に向いているのはV30以上だ。2016年から使われはじめた表記なので、まだこのロゴが表記されたmicroSDカードは少ない。だが、今後はこの表記のついた製品が増えていくだろう。
このほか、メーカーによっては“600×”など倍速表示を記載しているものがある。これはCDの1倍速の転送速度(毎秒150KB)を基準にした読み込み速度の表記だ。600×だと毎秒90MBとなる。
これは、90年代後半から2000年代初頭までSDカード以外のメモリーカードが乱立していたほか、データを持ち歩くメディアとしてCD-Rも使われていた時代に、異なる製品間でも速度を比較しやすいよう、レキサーなど一部メーカーが使っていた表記の名残だ。
【その3】高速転送規格のUHS-IまたはUHS-II対応
microSDXCまたはmicroSDHCのロゴをよく見ると、右側に「I」のロゴが記載されている場合がある。これは、UHS-Iの高速転送モードの規格への対応を示している。
現状では大半のデジタル機器がUHS-Iに対応しており、スペック表にわざわざ書かれることも少なくなってきた。また、UHS-I非対応でも問題なく利用できる。
なお、UHS-Iは規格として最大毎秒104MBまでの速度に対応しているが、実際の読み込みや書き込み速度はmicroSDごとに異なる。高速か低速かは、前述のUHSスピードクラスなどのロゴを見るか、実際にベンチマークテストを実施しないとわからない。
「UHS-II」という、より高速な毎秒最大312MBまでの転送に対応する規格もある。特徴は接続端子が増えている点で、UHS-II対応microSDカードは背面の端子が2段になっている。高速な読み込みや書き込みを利用するには、UHS-II対応の機器が必要だ。
現在はサンディスクや東芝などが、読み込みが毎秒200MBを超えるUHS-II対応microSDカードを販売している。
ただし、UHS-II対応microSDカードに対応した機器は現状ではほとんど存在しない。非対応のmicroSDカードスロットに入れた場合は、UHS-Iの最大毎秒104MBまでの速度に制限されてしまう。
現在UHS-IIに対応している機器はソニーの「α9」やオリンパスの「OM-D E-M1 Mark II」など一部のデジタル1眼、ミラーレス1眼カメラのほか、ハイエンドのUSBカードリーダーライターのみだ。これらはUHS-IIのSDカード対応なので、UHS-II対応のmicroSDをそのままでは使えない。
UHS-II対応microSDをUHS-II対応SDカードとして使うには、まだ種類の少ないUHS-II対応のSDカードアダプターが必要となる。
UHS-II対応microSDカード専用の用の小型USBカードリーダーライターがあれば、高速なUSBメモリーとしても利用できる。だが、サンディスクのUHS-II対応microSDには付属しているが、単品の製品としては販売されていない。
とにかく速度が欲しいならUHS-II対応microSDを買ってもいいが、速度の真価を発揮するにはある程度の知識と周辺機器が必要な点には注意しよう。
用途別、microSDカードベンチマークテスト
ここからは、用途別にオススメのmicroSD製品の紹介と、実際の速度をベンチマークテストで計測していく。ベンチマークテストはPCとスマートフォンの両方で実施した。
PCでのベンチマークテストは「CrystalDiskMark 5.2.1」を利用。標準の1GiB×5回のテストを実施した。テスト環境は「Surface Pro 3」のUSB3.0端子にアイ・オー・データのUHS-II対応USB 3.0接続のマルチメモリカードリーダー・ライター「US3-U2RW/B」を接続している。
スマートフォンでのベンチマークテストは、ファーウェイのハイエンドSIMフリースマホ「HUAWEI P10 Plus」を利用。テストアプリは「A1 SD Bench」だ。
4Kムービー撮影にも最適!高速モデル
まずは、高速データ転送が特徴のモデルから見ていこう。
高速なmicroSDカードが必要なのは、4Kムービーの撮影に利用する場合だ。スマートフォンでの撮影はもちろん、最近では4Kムービー撮影対応のウェアラブルカメラや360度カメラ、ドローンなどの需要がある。
PCのUSB3.0対応リーダーライターと接続すれば、高速にファイルをやりとりできる。4Kムービーの読み取りや書き込みも短時間で済む。このほか、SDカードアダプターを使って高速なSDカードとして一眼デジタルカメラの連写といった用途にも対応可能だ。
代表的な高速microSDカードを見ていこう。スピードクラスがClass 10なのに加えて、UHSスピードクラスがU3またはビデオスピードクラスV30の表記があるものから選定した。
64GBモデルの価格を見ると、サンディスクと東芝のUHS-II対応モデルが2万円台、それ以外は1万円台、トランセンドのみ1万円以下となっている。
スペック表記だけを見るとUHS-II対応モデルが毎秒200MB以上と圧倒的だが、この速度が出るのはUHS-II対応機器に限定される。数少ない対応機器以外の利用では速度が制限されるので注意しよう。
ビデオスピードクラスが記載されているのは3モデルのみだ。これは発売開始時期が2016年後半より新しいからだ。他のモデルも書き込み毎秒30MB対応のU3表記の製品なので、ほぼ同じ仕様を満たしていると考えていい。
まずはPCでのベンチマークを見てみよう。
いずれのモデルも、シーケンシャルの読み込みは毎秒90MB以上とかなり高速だ。ほぼ横並びと言っていい。書き込み速度はトランセンドとアイ・オー・データのモデルが良好だ。ただし、ランダムアクセスを見るとサンディスクの2製品が良好な結果だ。
価格を考えるとトランセンドの2製品がお得な結果となっている。容量は異なるため、PCで使うなら1枚で大容量の4Kムービーを保存しやすい「microSDXCカード Class 10 UHS-I U3 633x (Ultimate)」がいいだろう。
UHS-II対応モデルはUHS-I環境だと、ほかの高速なmicroSDカードと速度はほとんど変わらない。むしろ書き込み速度は一歩劣る性能となっている。
そこで、UHS-II対応SDカードアダプターを装着した状態でのテストも実施した。USBリーダー・ライターは同じくアイ・オー・データの「US3-U2RW/B」のUHS-II対応SDカードスロットを利用した。
UHS-II環境だと、読み込み速度は毎秒200MB以上と2倍以上、書き込み速度も毎秒100MB以上と高速化されている。高速なUSBメモリーと比較してもそこそこ高速な部類だ。今のところ利用シーンは限られるが、今後あると便利な機器も登場するかもしれない。
価格を考えると、実売2万2400円前後のサンディスクの「エクストリーム プロ microSDXC UHS-IIカード」がお得だ。専用の小型リーダーも付属する。ただし、UHS-II対応SDカードアダプターは付属しないので、必要なら別途購入しよう。
次に、スマホ(HUAWEI P10 Plus)での計測結果を見てみよう。
スマホだと読み込み書き込みともに、毎秒50~70MBあたりとなった。昔のスマホはmicroSDカードがいくら高速でも毎秒20MB程度しか出なかったことを考えると、最新スマホはmicroSDカードの性能をかなり引き出せることがわかる。4Kムービー撮影では高速なmicroSDカードを求められることもあり、このクラスのmicroSDカードを買う意義はあるといっていいだろう。
性能面ではサンディスクの「エクストリーム microSDXC UHS-Iカード」と東芝の「EXCERIA PRO microSDXCメモリカード」が優れている。ただし、価格を考えるとトランセンドの2モデルがお得だ。