従来のiPhoneとの最大の違いは充電速度にあり
iPhone 8シリーズは有線での「高速充電」と、ワイヤレス充電の「Qi」に対応した。これらの機能と充電速度をチェックしてみよう。
有線での急速充電だが、今回のiPhone 8シリーズは同社のMacBookでも採用している急速充電規格「USB PD」に対応した。
ただし、iPhone 8シリーズをUSB PDで充電するには、別売りのアップル製「Lightning - USB-Cケーブル」(直販価格3024円~)が必要となる。現在、iPhone 8シリーズでUSB PDの急速充電を利用できるのはこのケーブルだけだ。このケーブルと、MacBook付属のUSB PD対応ACアダプターや、市販のUSB PD対応充電器をつなげば急速充電できる。
では、実際にどれだけ高速に充電できるのだろうか。USB PDと従来のUSB充電器の環境を用意して、iPhone 8とiPhone 8 Plusの充電速度を比較した。
USB PD対応充電は、前述のアップル製「Lightning - USB-Cケーブル」と、安価なUSB PD対応充電器として「Anker PowerPort Speed 1 PD30」(実売価格2300円前後)を用意した。
従来のUSB充電計測用として、別途市販の10W(5V/2A)以上を出力できる急速USB充電器を用意した。iPhone付属の充電器を使わないのは、出力が5W(5V/1A)と小さく、ユーザーの多くはすでに使っていないと判断したからだ。
今回はcheero製のUSB充電器「Miracle Charger」(実売価格1980円前後)を利用した。USB1ポートあたりの出力は最大12W(5V/2.4A)で、従来のiPhone 7シリーズを7.5W(5V/1.5A)前後で充電できる。
実際に充電速度を計測した結果、iPhone 8の場合は確かにUSB PDでの充電は速いが、一般的なUSB充電器との差は10分以内に収まっている。今のところ、高い出費を覚悟してまでUSB PDの充電環境を用意する価値はないだろう。
一方、iPhone 8 PlusでUSB PD対応充電器を使うと、充電速度が明らかに短くなった。30分で50%充電できるなど、75%あたりまでの充電では従来のUSB充電よりも約70%ほど速くなっている。もしiPhone 8 Plusを購入するなら、少々コストをかけてもUSB PD対応の充電環境をそろえたほうがより便利に活用できるだろう。
ワイヤレス充電速度をチェック
ワイヤレス充電「Qi」での充電も試してみた。Qi対応機器は2011年ごろから製品が存在しており、現在ではサムスンの「Galaxy」シリーズ向けの10W出力対応の充電器が主流だ。アマゾンなどを見ると、Qi対応品や互換品や同等品がおおむね3000~8000円あたりで購入できる。「Apple Watch Series 3」もQi充電対応なので、充電器を使い回すことも可能だ。
ただし、ワイヤレス充電は充電電力が小さく、充電に時間がかかるという弱点がある。ではiPhone 8シリーズの対応電力はというと、Apple Storeで取り扱っているワイヤレス充電器は、年内のソフトウェアアップデート後に通常のUSB充電に近い7.5Wに対応予定だという。つまり、現時点では7.5W未満の電力にしか対応せず、充電にかなりの時間がかかる可能性がある。
今回は、筆者がGalaxy用として使っている、10W出力対応のKungber製「Qiワイヤレス充電器」(実売価格3200円前後)を利用してiPhone 8の充電時間を計測した。
結果、フル充電に5時間28分もかかった。ワイヤレス充電器の消費電力もチェックしたのだが、実際に流れる電力は3W程度だった。iPhone 8側が7.5W充電に非対応だからか、ワイヤレス充電器との相性なのかもしれないが、ここまで遅いと実用性に疑問符が付く。
もしiPhone 8シリーズのワイヤレス充電を使いたいなら、今後のソフトウェアアップデートで7.5W充電に対応したあと、iPhone 8対応をうたう製品を購入したほうが良いだろう。
なお、iPhone 8側の受電部は本体背面中心にある。充電するときはQi充電器の中心に置けばいい。スマホケースを装着した場合の充電だが、2~3mm程度の厚さなら問題なく充電できた。ただし、ワイヤレス充電器とiPhoneの間にSuicaなど非接触通信対応カードなどがあると、カードが破損する可能性がある。特に手帳型ケースにカードを入れて使っているユーザーは注意しよう。