みんなケータイを「振って」いた
そんなひと昔前の時代に生まれたのが、「ケータイを振る」という不思議な行為だ。
例えば渋谷などでは、ぬいぐるみなどのストラップを巨大につけている高校生が「ジャラジャラ」と音を立てて必死に振っている光景が見られた。
振ると電波が捕まりやすいという噂から広まったのだろう。ケータイで話をしていて電波が切れかかるとまずアンテナを伸ばして、それでも途切れ途切れになると、いよいよケータイを振って「もしもし」と通話を続けようとする。
この「ケータイを振る」という行動をしたくなる心理はちょっと分かる気がする。
本来は自分が動いて電波の入りのいいところにいくのがベストであるが、どうしてもそれができないとき、とっさに電波が途切れて欲しくないときに、何ができるか? と言われると、確かにケータイを振ることぐらいしかできないだろう。
動きがインターフェースになる
ケータイからアンテナがなくなり(現在ではワンセグ用アンテナに代わった)、3Gケータイになってあまりケータイを振る人も見かけなくなった。しかし「ケータイを振る」ことができなくなったわけではない。振ることに別の意味付けをしようじゃないか、という取り組みのカギとなったのはモーションセンサーだ。
モーションセンサーには、端末の傾きを測ったり、加速度を取ったりといったように、さまざまなものがある。任天堂のWiiのリモコンも、まさにこのモーションセンサーを用いて、今までにない体感的な動作でのゲームプレイを実現している。手にすっぽり収まり、その動きに意味を持たせることによって、モーションセンサーはとても直感的なインターフェースになる。
ケータイとモーションセンサーとの組み合わせで最初に感動したのは、ソフトバンクの「904SH」である(関連記事)。3.2メガピクセルカメラと光学2倍ズームという、カメラ機能にばかり注目が集まった端末であるが、実は6軸モーションセンサーが搭載された点が新しかった。
904SHが標準で備えていたアプリ「星座をさがそ」は面白かった。ケータイを空にかざすと、夜であろうが昼間であろうが、そこに今見える星を画面に映し出す。ケータイを動かすと、画面の星空も動く。地面に向けてかざすと、地球の裏側の星が見えるから、さらにわくわくしてくる。ケータイを動かすことをインターフェースにしている好例だ。
(次ページに続く)