身近なクラウドコンピューティングを実現するケータイ
実はここまで説明してきた機能は、ケータイを使わなくても、テレビに付属しているリモコンでも利用できる。ではケータイを使う意味は、数階層のメニューを省略するだけだろうか? その答えは別のところにある。
AQUOSケータイに搭載されているアプリには、Yahoo! JAPANアカウントでユーザーを識別する「ログイン」の機能がある。ここに2つの可能性がある。
1つは、パーソナライズド・トップメニューの実現。1人が1台ずつ使っているケータイの特性を生かし、誰のケータイからYahoo! JAPAN for AQUOSにログインしたかによって、表示させるコンテンツを変えたり、メールやフォトアルバムなどの自分のデータをすぐに呼び出したりすることができる。
友人の家に行って自分のお気に入りの写真を見せようと思ったら、友人宅のテレビに向かって自分のケータイからYahoo! JAPAN for AQUOSを起動すれば、すぐにスライドショーがスタートする。いちいちURLを入力する必要はない。
もう1つは、生活の中でのウェブ活用の連続性が高まることだ。パソコン、ケータイなどで能動的に情報を検索しておき、その情報をゆっくりと楽しむといった、端末を変えながら情報を楽しむ手段を増やすことになる。
例えば、帰りの電車の中でケータイからオークションを検索していて、良さそうな商品を見付けたとする。そのままケータイの中で見続けるのではなく、自宅にあるAQUOSの大画面でオークションの写真をより詳しく見て、買うか買わないかを決める。何気ない行動のように見えるが、同じYahoo! JAPANのアカウントを使っていながら、表示媒体やウインドウを再ログインなしに変えられるサービスはまだまだ少ない。
「Yahoo! JAPANにはeverywhere化の戦略があります。それぞれの単体のデバイスで完結せず、シームレスにつながっていくことが everywhere化です。テレビで見ていてパソコンで検索して決済する。ケータイで見ていた記録を、大画面で見る。ショッピングやクッキングなど、クオリティーや質感が大切なコンテンツはケータイの小さな画面で我慢せず、大画面で楽しんでもらいたいと思います」(菅泉氏)
またヤフーの助光康大氏は、「より適した場所で適したデバイスによるアクセスが可能になり、ウェブ活用がライフスタイルの中で最適化されます。リモコンを持ち替えないで全ての操作ができる点にこだわりました。より身近なクラウドコンピューティングの姿といえるかもしれません」と語る。
今後は片方向のIrSSだけでなく、双方向で通信できる技術を活用して、テレビとケータイとの間でインタラクションを持たせる未来像もあるそうだ。対応しているテレビの普及がキーになるものの、2009年には100万人の利用者を目指していく。