松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」

「産経新聞 iPhone版」に見る新聞の未来 (4/4)

文●松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

2008年12月19日 20時00分

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新聞の未来がケータイから開けるか?

 2008年、海外の新聞系メディアの経営破綻のニュースがたくさん聞かれた。

 また日本国内でも、雑誌の休刊が相次ぎ、新聞を含めた紙メディアにとって受難の時代を迎えている。収益をどう確保するか、といった課題を突きつけられている。購読者から信頼され続ける、読む習慣を持ってもらうメディアとしてどう残っていくか、考える時期に来ていることは間違いない。

 では、iPhoneアプリのビジネス側面はどのように捉えているのだろうか?

 「新聞社は新聞というパッケージを作る会社でした。限られたページ数に情報の重要度を明示して盛り込み、広告を掲載することで成り立っています。しかしデジタル化したとき、ビジネスモデルは課金なのか、広告媒体としてやっていくのか、これらを組み合わせるのか。もしかすると、これまでの新聞が行なわなかったこと――1つの広告主が広告欄を独占する新聞ジャックなど――もできるかもしれません。全てをゼロベースで考える必要があります」(近藤氏)

 スタートから1週間が経ったiPhone向け産経新聞アプリに対し、App Store上で700件近いレーティング、200件以上のレビューが寄せられている。今までのデジタル新聞の取り組みでここまで短期間に多くの人にリーチしたり、フィードバックが得られた経験はなかった。「やってみて良かった。継続していきたい」と、近藤氏も手応えを感じているようだ。

 iPhoneというインターフェースは、100年以上かけて培われてきた記事の位置や見出しの大きさで重要度を知らせる新聞という情報整理のスタイルを復権させることができるのか? はたまた、時系列や検索でニュースを読むウェブやケータイの情報収集モデルに押されてしまうのか?

 いままさに、1つのアプリを通じた実験が行われている最中で、ユーザーとしても、次のメディアへのニーズをフィードバックする良いチャンスだと、僕は感じている。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET



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