松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析

アップルiPhoneラインナップから浮かび上がる2つのこと (2/2)

文●松村太郎 編集● ASCII

2021年09月20日 09時00分

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半導体不足への対応も見られるチップ戦略

 続いて、チップの話です。

 アップルはiPhone 4の世代から自社設計のチップをiPhoneに採用し始め、iPadへの展開、Apple WatchやAirPods、HomePod mini、Apple TVでも活用してきました。

 自社設計のチップについて「Apple Silicon」とブランディングし、ついにはMacもIntelからのスイッチを実現。モバイル譲りの省電力性とハイパフォーマンスを両立する大きな飛躍を遂げました。

 アップルの自社設計チップは大きな差別化要因となっており、これはスマートフォンやタブレットだけでなく、コンピュータからワイヤレスヘッドフォンまで、あらゆる製品で、チップ発の優位性を謳歌することになりました。

 最も顕著だったのが2017年に登場し完全ワイヤレスヘッドフォンの市場を作ったAirPodsであり、少なくとも2年間進んでいたと評価することができます。最近の例は、前述のM1 Macでした。

 チップの進化と製品への展開を適切にマネジメントすることは、アップル製品の重要な要素となっており、今回そうした視点においても、アップルが気配りをしている点を垣間見ることができました。

 今回のiPhoneの刷新と同時に、iPadとiPad miniが採用されました。これら2つのモデルはいずれもA12 Bionicが搭載されていたモデルで、それぞれA13 Bionic、A15 Bionicへとアップグレードされました。

 こうして、主力のiPhone・iPadラインアップではすべてA13 Bionic以上の新しい設計のチップに集約される形となりました。実際、特にiPadの新チップ搭載は意外でしたが、iPhoneとiPadは、特に2021年第4四半期、供給不足で伸び悩む点を予告しており、製品の競争力と製造上の問題を考えて、A13 Bionicへのアップグレードを決めた、と見ることができます。

 Apple TVにはA8とA12 Bionic搭載モデルが残っていますが、A8搭載のHomePodが製造終了となるなど、アップル全体で製造するチップのバリエーションを減らす努力を垣間見ることができます。

 半導体不足が叫ばれる中で、アップルは自社設計の古いチップの製造をできるだけ絞り、主力チップの確保や、さらに上位の新チップの製造へ振り向けたいというのが本音だと考えられ、きっちりと対応してきた、と見ることができるわけです。

 

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。モバイルとソーシャルにテクノロジー、ライフスタイル、イノベーションについて取材活動を展開。2011年より8年間、米国カリフォルニア州バークレーに住み、シリコンバレー、サンフランシスコのテックシーンを直接取材。帰国後、情報経営イノベーション専門職大学(iU)専任教員として教鞭を執る。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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