山谷剛史の「アジアIT小話」

中国社会でも迷惑がられる転売業者 狙われるのはSwitch 2からライブチケット、病院の整理券まで (2/2)

文●山谷剛史 編集● ASCII

2025年04月29日 12時00分

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ライブチケットは中国でも転売の格好のターゲット

 ところで中国での転売業者は、中国国内において人気のデジタル製品以外でも暗躍し、そちらの方が社会問題となっている。

転売ヤー

チケット転売業者に警察も手を焼く

 たとえば、コンサートやイベントのチケットだ。これは日本でも同じことだろうが、発売とともに爆速で買い占め、欲しい人々に高値で販売することはよくある。

 たとえばベテランの“ダフ屋”が「舞台裏で何万人ものチームが協力し成功率99%でチケットを手に入れます」といった広告を出し、手数料を最低3000元(6万円弱)から取るといったことや、最高額が1855元(約3万6000円)のイベントで1万8800元(約37万円)で転売業者が販売するといったことがあった。

 チケットを獲得するために機器を揃えた上で専用のシステムを活用してチケットを獲得していることから、チケット販売側も対応をしている。ユーザーの注文リクエストをリアルタイムで識別し、実際のユーザーによるものか機械の動作によるものかを判断し、ほぼすべての悪意あるソフトウェアによる購入を防ぐことができるシステムを導入。

 またチケットをオンライン購入する際に身分証明書と顔画像を登録し、チケットと身分証明書と顔の情報が完全に一致していることを確認するシステムも導入された。こうした対策でかなり転売業者の購入を防ぐことができたという。

病院の整理券がシステムに侵入されて不正に発行されていた
転売対策でオンライン化するとセキュリティ対応が大変

 医療現場でも問題になっていた。特にコロナ禍を経て、医療診察の予約はオフラインからオンラインに移行してからが顕著だ。中国では予約時に病院側が設定した診療代金を支払って、整理券を購入する。この整理券はさまざまで、高額なファストパス的なものや、著名な名医や院長・副院長への診療予約があるのだが、不思議なことに転売業者は都合のよい整理券をすぐ準備するというケースがあった。実際は犯罪者が病院のシステムに侵入して、不正に整理券を入手するオンライン割り込みをしていたのだ。

 チケットの転売行為には法的処罰があり、営利目的でチケットを購入する者が、チケット不正取得ソフトやその他の手段を通じてチケットを購入または買い占め、額面価格の数倍数十倍の価格で販売した場合は「転売」に該当し、「中華人民共和国公安行政処罰法」第52条第3項に違反し、10日以上15日以下の拘留と1000元以下の罰金に処せられると規定している。ただし、チケット以外ではこれにあたらないので、デジタル製品の転売の話題はまだまだ出てきそうだ。

 ニーズが高いオンラインチケット販売では、対策をしても転売業者が入り込んでくる。新製品発売時の公正なデジタル販売抽選でも、クラッキングで抽選券を狙う業者がいても不思議ではない。オンラインでのセキュリティにも注意が必要なのだ。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「移民時代の異国飯」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク

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