KDDIとJR東日本、高輪ゲートウェイシティで
「未来への実験場」始動を発表
KDDIはこの春から本社機能を順次高輪ゲートウェイ駅直結の「TAKANAWA GATEWAY CITY」に移転し、7月1日から本格稼働させています。また、本社を東京・高輪に移転したことを機に、JR東日本との連携のもと「未来への実験場」として、高輪ゲートウェイシティでの新たな取り組みを発表しました。
このプロジェクトは、「あなたに気づく町、みんなで気づく町」をコンセプトに、訪れる人と働く人の両方に新しい体験を提供するものです。
KDDIの松田浩路社長は発表会冒頭、「情報通信インフラを担う企業として“つなぐ力”を追求し、2030年ビジョンの実現に向けて新たな挑戦を始める」と述べました。高輪は日本初の鉄道が開通したイノベーション発祥の地であり、「この地から通信分野における新たな価値創造の実験を開始し、新しい次元へのアップグレードを目指す」と強調しました。
JR東日本の喜勢陽一社長も、高輪ゲートウェイシティが「100年先の未来を見据え、心豊かな生活価値を創造する実験場」であるとし、KDDIとの共創に大きな期待を示しました。
「TAKANAWA GATEWAY URBAN OS」を基盤とした「ハイパー体験」
この未来の都市を実現するため、KDDIは「デジタルツインプラットフォーム」を構築しました。これは「TAKANAWA GATEWAY URBAN OS(都市OS)」と呼ばれ、街の防犯カメラ映像、各種センサー、顧客データ、鉄道データなど多岐にわたる情報をリアルタイムで収集・分析し、サイバー空間で活用することで、現実の街づくりにフィードバックする仕組みです。
JR東日本のデータも活用し、街の情報がAIによってリアルタイムで分析されます。この都市OSが、以下に述べる二つの「ハイパー体験」の基盤となります。
1、訪れる人への「ハイパー・パーソナル体験」
街が能動的に人にアクセスし、パーソナルな提案をしてくれます。一例としては、駅の改札通過時にその人に合わせた情報がスマートフォンに届きます。子連れの親子が改札を通過した場合、カメラの映像解析により、ロボットが子供向けジュースを持って駆けつけ、ベビーカーレンタルをレコメンドします。また、スマートフォンのバッテリー残量が少なくなっていることを検知し、充電スポットやクーポンを配信することも可能と言います。
さらに、(高輪ゲートウェイ駅の場合)駅前広場では、そこに居合わせた人の属性に合わせてロボットが商品を配布します。音楽イベント参加者には熱中症対策としてスポーツドリンクを配るなどの例が挙げられています。
お店での購入履歴とも連携し、毎朝コーヒーを購入する人には、改札通過時にコーヒーに合うパン屋のクーポンが届く、といったパーソナルなサービスが提供されます。
なお、ロボットのサンプリングの場合、誰かひとりがたくさん持って行ってしまうことも考えられますが、それはこれから対応するとのこと。
2、働く人への「ハイパー・パフォーマンス体験」
働く人の能力を最大限に引き出し、待ち時間や無駄な時間を排除することで、最高の集中力と効率を実現し、イノベーションを加速させると言います。KDDIのオフィスがあるフロアではすでにローソンのレジレス店舗が導入されています。アプリで事前に商品を選び、入店時に自動チェックイン、決済後に商品を受け取るだけで、平均滞在時間は約2分、レジ待ち時間はゼロを実現しています。それでも朝と昼は店内が混雑するようですが、今後情報が蓄積されてきたら解消されることでしょう。
次に、KDDIの新オフィスは「つなぐ力を進化させワクワクする未来を発信し続けるコレクタブルシティ」をコンセプトに、1万3000人の社員と多くのパートナー企業が集まる場を目指しています。
オフィス内の壁を極力取り払い、オープンな空間とすることで、偶発的な出会いを促進します。また、社員同士のマッチング施策も用意され、部門を超えたコラボレーションを促します。Knowledge Campと呼ばれる社員なら誰でもフリースペースでは、他部署やパートナー企業の人たちとたまたま出会って、雑談レベルからコラボレーションに繋がることを期待しているとか。
その一環として、ABW(Activity Based Working)と呼ばれる、活発な議論を促す「グルーブな空間」と、深く思考に没頭できる「チルな空間」を使い分ける働き方を導入し、社員の創造性を高めます。
そして、社員の庶務業務を軽減し、創造的な業務に時間をシフトさせるため、配送や移動販売などのロボットが導入されています。アプリで自分がいるフロアまでローソンの商品を持って来てもらったり、社内便を持って行ってもらったりなど、所狭しとロボットが動いていました。
そのほか、働き方とは少し違いますが、3D都市モデルを活用し、1万人規模での人流シミュレーションも実施しています。これは災害時の避難計画やイベント時の店舗・警備配置に活かされ、将来的にパーソナルモビリティの運行ルート選定や安全対策などにも活用される予定とのこと。