格安データ通信SIMを買って格安に使い倒す!

eSIMオンリーの新iPhoneが登場! MVNOの格安SIMでeSIMはどうなっている? (2/2)

文●正田拓也 編集● ASCII

2025年09月28日 12時00分

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eSIMの発行しやすさやトラブル対応も重要

 次にeSIMの再発行のしやすさも結構重要。これは、MNOであっても面倒がともなう。たとえばKDDI系やMVNOのように24時間対応でなかったり、運転免許証などの書類を用いたオンラインでの本人確認が必要なケースがあるためだ。

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たとえばKDDIのサービスでは(povo2.0を含む)、24時間対応でないうえにeSIM再発行時にはeKYCによる本人確認が求められる。これはスマホのカメラで免許証などを上から撮ったり、斜めから撮ったり、あと自分の顔を動かしながら撮影とそこそこ手間が必要

 たとえば、IIJmioは9時~20時30分までが対応時間としているし、日本通信SIMでも申込時間が10~20時までは1時間以内、それ以降は翌11時頃までに完了と目安が示されている。

 mineoは公式サイトには再発行手続きから「最短1日程度」としており混雑時にはもっとかかると記されている。現実にはもう少し短い時間で対応されていることが多いようだが、すぐ対応できない場合があると書かれていると不安が残る。

 また、再発行の方法も、各事業者のユーザーページにアクセスすればすぐ手続きできるサービスもあれば、SMS認証が必要だったり、運転免許証と自分の顔をスマホのカメラでいろいろ写す必要があるなど違いがある。

トラブル対応でMVNOが絶対不利とは言えない

 では、eSIMの手続きではMVNOは絶対不利かと言えば、必ずそうとも言えない。MNOでは、オンラインでのeSIM再発行は無料のケースが多いが、なんらかのトラブル時はキャリアショップに出向く必要が生じ、来店の予約から数千円の高額な手数料の発生と大変な面倒事になる可能性がある。

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新型iPhone発売日にeSIM関連のシステムに負荷がかかったのか、ドコモでトラブル。ドコモ側の問題にもかかわらず、キャリアショップに行っての解決が必要になった人に対しても、手数料を徴収したことがSNSで問題に。週が明けてようやく返金対応が発表された

 この失敗が明らかにユーザーに非があるならまだしも、MNOの場合、SMS認証だったり、同じキャリアの回線でのアクセス、パスキーなど複雑な条件があるほか、eSIMが入った端末が故障した場合にも何もできない状態になってしまうことがある。この場合、キャリアショップに直行となる。

 実際、先日の新型iPhone発売時に、ドコモがeSIMのシステムトラブルを起こしたにもかかわらず、ユーザーから手数料を徴収してSNSを騒がせたことは記憶に新しい(その後、返金対応することになったが)。

 その点、MVNOではオンラインやコールセンターでの対応となる。対面ではないから解決しにくい部分もあるが、元々店舗がないことが多いMVNOだけに、自宅で完結することが多いほか、手数料がかかったとしてもMNOよりは安く済む可能性が高い。

eSIMを利用する場合はトラブル対応を想定しておく

 どうにも面倒なeSIMだが、iPhoneを始め、スマートフォンを使う上で今後はeSIMからは逃れられない。そのため、eSIMの使い勝手やサポートがユーザーがキャリアを選ぶ1つの要素になる可能性もあるので、対応の蓄積や双方の慣れとともに徐々に改善が進むだろう。

 とは言え、eSIMを使う前には万が一のトラブル時のことも考えておいたほうがいいだろう。

 たとえば、落とし物としてスマートフォンが拾われた場合、従来は警察はSIMカードのマークやシリアル番号からキャリアを調べ、キャリア経由でユーザーに連絡が行くケースがある。ところがeSIMの場合、まずロックを解除しないと電話番号がわからないため、落とし主を特定する手段が少なくなる。

 そのため、紛失した場合の検索機能などを有効にしておくなど、物理SIM以上に気を使う必要がある。また、端末の故障時にSIMを差し替えて使うということもしにくくなるため、そうした場合に連絡をどう取るかも考えておく必要がある。

eSIM化によって期待できることもある

 デメリットを中心に紹介してきたeSIMだが、オンラインでの申し込みですぐ使用開始できるなどのメリットもある。今後も人件費や送料など、各種コストの上昇が見込まれる昨今、ユーザーとキャリアの両方がeSIMをうまく活用すれば、手数料を低くすることも可能だろう。

 また、今回の新iPhoneのようにeSIMだから実現しやすくなった薄型化やバッテリー容量の増大、SIMスロットという開口部がないことによる端末の信頼性向上などもある。SIMカードが簡単に取り外されないことによる盗難時のリスク低減も考えられる。

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スマホメーカーにとってもeSIM採用のメリットは考えられる。超薄型のiPhone AirはeSIMがほぼ使われていない中国向けを含めて、eSIM専用設計になっている

 筆者としては、現時点でのeSIMオンリー化は少々無理があると感じるものの、この強硬手段によって、eSIMの取り扱いがもっと洗練される可能性も考えられる。ユーザーも積極的にeSIMを使い、不便なところは声を上げるようにすれば、eSIM周りの環境がもっと整備されていくのではないだろうか。

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