アップルが独自に設計するApple M5チップを載せた新しいiPad Proが、10月22日に発売されます。先駆けて13インチのWi-Fi+セルラーモデルを入手して、最新M5チップの実力を試しました。
2024年3月の前モデルで大進化し、大きな変化はない新iPad Pro
iPadシリーズの頂点である「Proを選ぶ理由」は?
iPad Proは約1年半ぶりのモデルチェンジです。大きさは13インチと11インチ。それぞれにWi-Fi+セルラーモデルと、Wi-Fi単体モデルがあります。4種類のストレージサイズのバリエーションも同じ。販売価格はM4搭載機から据え置かれました。11インチが16万8800円~、13インチが21万8800円~。
M5搭載機はAppleシリコンがアップデートされたこと以外、本体のデザインや機能はM4搭載機から大きく変わっていません。iPhone Airの5.6mmよりも薄い本体も一緒。13インチが5.1mm、11インチが5.3mmです。Apple Pencil ProやiPad Pro用Magic Keyboardは、M4搭載機に対応するアクセサリーと同じものがM5搭載機でも使えます。
iPad ProはiPadシリーズのフラグシップモデルです。ハイエンドモデルのM3搭載iPad Airに対するアドバンテージをいくつか備えていますが、筆者はHDRコンテンツの表示に対応する有機EL方式のUltra Retina XDRディスプレイと、Apple Pencil Proによるスムーズな書き味を実現するディスプレイ「ProMotionテクノロジー」の有無に、違いを感じます。
iPad Proはストレージが1TB/2TBのモデルを選択すると、オプションで光の反射を抑える効果が期待できるNano-textureディスプレイガラスに変更もできます。
iPad ProのディスプレイにProMotionテクノロジーが搭載されていることの重要性については、iPad ProとApple Pencilでイラストを描く仕事をしている筆者の家族もよく主張しています。ペン先と描画のずれがなく、なめらかな筆運びを実現するProMotionテクノロジーを搭載したiPad Proに一度慣れてしまうと、もうほかのiPadでは仕事にならないそうです。
筆者は2023年にWONKのベーシスト、井上幹さんにiPad ProのLogic Proによる楽曲制作についてインタビューしました(アップル「Logic Pro」音楽のプロが使う理由)。
iPad Proのパフォーマンスが優れているだけでなく、Macとの連携によるシームレスなワークフローが構築できるところなど、その時に井上さんは、プロのミュージシャンの音楽ツールとしてもiPad Proが欠かせないアイテムである、とコメントしていました。
AI処理の多様化に備えたM5チップ
メモリ帯域が約30%拡大
iPadシリーズの頂点に君臨するProに、今年も最新バージョンのAppleシリコン「M5」が一番早く導入されました。2024年はiPad Proが先駆けましたが、今年は同時に発売されるMacBook ProとApple Vision ProにもM5チップが搭載されています。
Apple M5チップの進化は、ひとことで言えば「AI処理の多様化」に対応したことです。2024年にApple M4チップに統合するCPUにAI処理性能を高めるニューラル・アクセラレータを組み込みました。今年はM5チップの10コアGPUの各コアにもニューラル・アクセラレータを追加しています。
そして、Apple MシリコンのAI処理の要である16コアNeural Engineも高速化しました。CPU、GPU、Neural Engineがタスクの性質に応じて最適な処理を分担し、ユニファイドメモリを介してデータを共有することで、高速かつ省電力にタスクを遂行できるアーキテクチャを強化しています。
M4世代での標準モデル帯域は120Gbpsですが、M5チップでは帯域幅を約30%広げて153Gbpsにしています。Apple Intelligenceが今後様々なAIモデルを扱うことになるほど、処理の高速化・安定化を図ったM5チップの真価が発揮されると思います。当然ながら今後、M5 Pro/Max/Ultraといった上位チップが登場すれば、さらなるパフォーマンスの高みも見えてくるでしょう。