荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ”

猫好き必見! 動きが速すぎる猫のおもちゃ遊び撮影で見るミラーレス一眼の進化

文●荻窪 圭/猫写真家 編集●ASCII

2025年10月23日 17時00分

猫は草が好き。というわけで、くわっと目を見開き、口を大きく開けた瞬間の表情がよかったのでトップ写真に。2023年6月 富士フイルム X-S20

 前回の続きで申し訳ない(突如訪れた愛猫の死! 過去さまざまな機材で撮影した写真で振り返りつつ悲しみを癒す)。飼い猫が息を引き取ると、ついついそれまで撮った写真を見返してしまうわけだが、そしたらやたら元気にいろんなおもちゃで遊んでくれてたおかげで、ミラーレス一眼性能チェック的な写真がいっぱいでてきたのである。

ミラーレス一眼はここ数年で飛躍的に性能が上がった

 ここ数年のミラーレス一眼は、画質がある程度のレベルに達したこともあり、ハイエンド機を中心にAF周りや連写性能、そして高感度性能の向上が追求されてきた。

 AF周りは大きく分けて2点。ひとつは賢さ。本連載の場合は「猫瞳AF」。猫の瞳を見つけるのみならず、一度捕まえた猫の瞳をどれだけ離さずにいられるか。もうひとつは速さ。どこにピントを合わせるか決めたら、どれだけ早くそれを捉えられるかだ。

伸びた前足に影響されず、瞳にちゃんとフォーカスが来てるのがいい。超広角レンズをつけて近寄ったら前足で攻撃されたので、その一瞬を逃さず。2022年12月 キヤノン EOS R6 II

 そして、コンティニュアスAF(常にAFを合わせ続けるモード)時にどれだけフォーカスがずれないで高速連写ができるか。AFの賢さと速さである。そして、画素数より高感度性能。室内でシャッタースピードを上げて撮るとどうしても感度が上がっちゃうからね。

 つまり、室内で動き回る猫をきっちり捉えられるカメラは(猫撮り的に)優秀なのだ。

 冒頭写真は富士フイルムの「X-S20」。トウモロコシの葉なんだけど、それにやたらくいついてくれたので、思わず撮ったもの。ちゃんと手前のトウモロコシの葉がぼけて、ミルの目にフォーカスが合っている。連写した中での一番よかったカットだ。

おもちゃを使いながら写真を撮れるカメラがイイ

 ではいろんなカメラで撮った躍動感のある写真を披露しよう。まずはおもちゃ編。

 最初はキヤノン「EOS R3」。縦位置グリップが付いて、いささか重たいので、左手で遊びながら右手で撮るのは握力的にきつかったけど、見事、猫じゃらしにとびつこうとする瞬間。

最新のフラッグシップ機に比べるとちょっとまだ弱いけど、顔がちゃんと見えていればこのクオリティ。今まさにおもちゃを拝み取りしようとする瞬間だ。真剣な表情がいい。2021年11月 キヤノン EOS R3

 同じ猫じゃらしものでもう1枚、次はニコンのフラッグシップ機「Z9」だ。Z9とZ8は電子シャッター中心という大胆な構成で、気持ちよく撮れる。

捕まえた、と思ったら猫じゃらしがすりぬけてしまったという瞬間。前足ではなく、ちゃんと瞳にAFが来たままなのが素晴らしい。2021年12月 ニコン Z9

 ちなみに室内で撮るときは、このように上から撮るといい。照明は天井についてるから、顔に光があたって目がきれいに光ってくれるのだ。そして、上に身体を伸ばした瞬間だと、背景の床がぼけて立体感も出る。

 次はOMDSの「OM-1」。背景に青いクッションがあったシーンをセレクト。動きが速くて手元がブレてるのがいい。これは紐の先に蚕の繭をくくりつけた猫のおもちゃで、食いつきがすごくよかった。

見事、おもちゃを捕まえたの図をOM-1で。蚕の繭はお気に入りすぎてぼろぼろにされちゃいました。2023年2月 OMDS OM SYSTEM OM-1

 続いてニコンの「Z6 III」。前モデルよりAFと連写がぐっと強化されたということで、これで撮った猫遊び写真が大量にあった。かなり気に入ったらしい。そこからカラフルなおもちゃを捕まえようとする瞬間。

 背景に餌が見えてるのはちょっと失敗。でも、思いきり身体を伸ばした瞬間でも、ちゃんとフォーカスが目に来ている。

写真としてはおもちゃがカラフルな方が映えますな。でも背景には気をつけましょう。このときは窓からの外光での撮影。2024年6月 ニコン Z6 III

 めずらしく横から撮ったものも1枚。トウモロコシの葉を捕まえた瞬間を真横から撮ろうと狙ったものだ。カメラは富士フイルムの「X-S20」。ISO12800という高感度で。

奥の部屋のドアを閉め忘れたので、黒い猫の背景が暗いというアレなことになってしまったが、見事に捕まえた瞬間を撮れた。2023年6月 富士フイルム X-S20

 天然ものでもうひとつ。近所のエノコログサ(俗称:猫じゃらし)にくいつこうという瞬間をソニーの「α7C II」で。

天然ものはやはり食いつきがいい。エノコログサを取りだした瞬間に駆け寄ってきた。2024年7月 ソニー α7C II

 こういう動きのあるシーンは動画で録りたくなるけど……、というか動画で録っておけばよかったと思うこともあるけど、スチルカメラ脳なので、まずその瞬間を写真で、と身体が反応しちゃうのだ。

 あと2枚行こう。

 ミルは一時期、お気に入りもおもちゃを投げると追いかけていって、咥えて戻ってくるという「君は犬かい!」な年頃があり、特に青い色のおもちゃへの反応が良かったのだ。なので、青いネズミのおもちゃを咥えて戻ってくるときのカット。カメラはソニーの「α7C」。

ちょっと前のモデルなので、現行品ほど猫AFは優秀じゃないけれども、こういう正面のカットならOK。おもちゃを口にくわえてこっちへ駆け寄ってくるときのカット。2023年2月 ソニー α7C

 このように咥えて戻ってくることがたまにあったのだけど、獲物を捕まえてきたぜ、と飼い主に自慢しにきてるのかもしれない。

 最後は猫じゃらしのおもちゃで遊ぼうと目の前で振ったら……大あくびをされた瞬間をパナソニックの「S1R II」で。

左端にぼけて見えてるのが猫じゃらし。食いつくかと思ったら、大あくびされてしまった。2025年3月 パナソニック S1 R II

 いろんなカメラで撮ってきたけど、ミドルクラス以上で一番猫AFが優秀なのは、ソニーの現行モデルかなと思う(たまたまミルとおもちゃで遊ぶシーンをあまり撮ってなかったけど)。リアルタイムトラッキングAFが優秀で、一度捕まえたら離さないパワーが強い。さすがいち早く猫瞳AFを搭載したメーカーである。

 それに次ぐのが、キヤノンやニコンのミドルクラス以上のモデルかなという感じ。

猫を撮る場合、どんなシーンを撮るかによって
カメラの性能を考えよう

 普通の人が飼い猫が遊んでる姿を撮りたいと思ったら、一番大事なのは猫を捕まえたら放さない猫AF性能と、とっさにぱっと構えられる軽さ。左手で遊びながら右手でカメラを持って撮るとなると、そこが大事になる。逆に連写速度はそこそこでよい。カメラを選ぶときはその辺を念頭に置いてやるといいかと思う。

 にしても、デジタル一眼もちょっと前に比べるとずいぶん賢く速くなってびっくりである。この連載を始めた頃の細かな苦労やテクが、どんどん不要になっていくのだから。

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筆者紹介─荻窪 圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系フリーライター兼猫カメラマン。今はカメラやスマホ関連が中心で毎月何かしらのデジカメをレビューするかたわら、趣味が高じて自転車の記事や古地図を使った街歩きのガイド、歴史散歩本の執筆も手がける。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社 知恵の森文庫)、『東京「多叉路」散歩』(淡交社)、『古地図と地形図で発見! 鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)など多数。Instagramのアカウントは ogikubokeiで、主にiPhoneで撮った猫写真を上げている。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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