さらに突き抜けた空間コンピューティング体験! M5搭載Apple Vision Pro実機レビュー (1/2)

文●山本 敦 編集●ASCII

2025年10月25日 12時00分

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 アップルがヘッドセットスタイルの空間コンピュータ「Apple Vision Pro」に、最新のApple M5チップを搭載する第2世代の新製品を発売しました。実機を5日間ほど試したインプレッションをレポートします。

M5搭載Apple Vision Proが登場。新開発のデュアルニットバンドの装着感もレポートします

Apple M5により映像再現力が向上

 Apple Vision Proはウェアラブルタイプのディスプレーを一体にした、パーソナルなコンピューティングデバイスです。視線トラッキングと指・手のひらによるジェスチャー操作、そしてSiriに話しかけて操作します。本体に搭載するデジタルクラウン、トップボタンはメニュー画面内を移動したり、本体内蔵のカメラによる写真撮影などに使います。

 キーボードやイヤホン(AirPodsとBeatsの製品)など、Bluetoothアクセサリーにも対応しています。筆者はMacユーザーなのでApple Vision ProにMacの画面を表示する「Mac仮想ディスプレー」により、Apple Vision Proを巨大なメインディスプレーのようにして使っています。

 2024年末にアップルがリリースしたvisionOS 2.2以降から、画面のアスペクト比を21:9相当のワイドと、32:9相当のウルトラワイドに調整して、Apple Vision Proによる広大な仮想ワークスペースが利用できるようになりました。ウルトラワイドを選択すると、視界を包み込むカーブドディスプレーのようなスクリーンが目の前に投影されます。

Mac仮想ディスプレーのワイド表示のイメージ。画面の両サイドが湾曲したカーブドディスプレーのようなスクリーンになります

 カスタムメイドによる、マイクロOLEDパネルを搭載した空間ディスプレーシステムは解像度が4K以上。M5搭載Apple Vision ProではマイクロOLEDパネルなどハードウェアコンポーネントを変更せずに、Appleシリコンの最適化によって性能をブラッシュアップしました。

 たとえばレンダリング精度を約10%向上させるとともに、最大リフレッシュレートを従来の90Hzから120Hzに引き上げています。この結果、Apple TVアプリの映像は画質が少し向上しました。さらに、ウェブページなどのテキストをスクロール表示した際の残像感がM2搭載モデルよりも少なくなる効果を体感できます。

空間ディスプレーシステムにはハードウェア的な変更を加えていません

 Apple Vision Proが内蔵するカメラによるシースルー映像も高精細です。そのため、空間や時間の感覚を失うほどの高い没入感が得られます。その一方で、せっかく高めた集中力と没入感を途切れさせてしまう2つの要素が課題として残されていました。ひとつが本体の重さです。

装着感向上、光漏れが防げる新開発のデュアルニットバンド

 Apple Vision Proはヘッドセットと有線接続のバッテリーパックにより構成されます。着脱交換可能なライトシーリングとヘッドバンドの構成によって異なりますが、合わせた重量は800gを超えます。デジタルスケールで測ったところライトシーリングなしの本体が約488g、バッテリーパックが約353gでした。アップルは本機の重さによる負担を軽減するため、新しい専用アクセサリーとなるデュアルニットバンドを発売しました。

 従来のソロニットバンドのように後頭部から支持しながら、同時にApple Vision Proを装着した状態で、頭頂部もダブルでホールドするストラップを追加しています。M2搭載Apple Vision Proとの互換性も確保されており、反対にM5搭載機でも従来のApple純正バンドが使えます。

新開発のデュアルニットバンド。後頭部と頭頂部をそれぞれのストラップで固定します

 右側面のフィットダイヤルを回すと、後頭部と頭頂部のストラップが同時に締まってフィット感が調整できます。デュアルニットバンドにはS/M/Lの3サイズがあり、実物を試着しなくてもiPhoneのApple Storeアプリから自分に適したサイズを探せます。筆者はMサイズでした。

 デュアルニットバンドの装着感はおおむね良好です。頭頂部にもストラップがあるおかげで、ヘッドセットを装着した状態で前方下向きにかかる重さの負担が軽減されます。筆者はソロニットバンドを使う時には、本体が落ちないようにライトシーリングを額にグッと押し当てるように、フィットダイアルを締め上げて装着していました。そのため長時間身に着けていると額や眉間のあたりに継続的な圧がかかって辛くなることがあります。

 装着した状態で上方向にテンションがかかるため、ライトシーリングの下側(視線の下方向)に光漏れの原因になる若干のすき間もできてしまいました。デュアルニットバンドはこれらの課題をかなり解消してくれます。

デュアルニットバンドを装着したイメージ。Apple Vision Proの本体に傾きがちになる比重が改善されます

 ヘッドセットを装着した状態で前のめりになりがちなバランスを改善する目的も兼ねて、デュアルニットバンドは後頭部側のストラップにタングステン素材のインサートを搭載しています。

 いかにも金属の板が入っている感じはしないものの、ソロニットバンドに比べるとデュアルニットバンド自体が少し重くなります。質量は約195.1g。ソロニットバンドは49.7gです。全体の装着バランスが安定することで、重さが効果的に分散されるため、バンドの重さを意識することはほとんどありません。筆者はデュアルニットバンドの方が楽に感じます。

デュアルニットバンドを計測。質量は195.1gでした

 Apple Vision Proの没入体験を妨げるもうひとつの要因が、バッテリー残量に気を取られることです。M5搭載機はAppleシリコンの最適化を図ったことで、パフォーマンスと電力効率のバランスがさらに向上しています。専用バッテリーパックによる連続駆動時間が新製品では約30分ほど伸びています。

 立ち上がったり、歩いたり、移動しながらApple Vision Proを装着する場面以外では、バッテリーパックを給電しながら使えば長時間の仕事やコンテンツ視聴にも対応できます。

専用バッテリーパックによる駆動効率も高めています

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