さらに突き抜けた空間コンピューティング体験! M5搭載Apple Vision Pro実機レビュー (2/2)

文●山本 敦 編集●ASCII

2025年10月25日 12時00分

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リファインされたPersonaが楽しい

 秋にリリースされたvisionOS 26から、デバイスに内蔵するカメラでユーザーの顔と表情をスキャンして作るアバター「Persona(ペルソナ)」のリアリティが向上しています。精度が向上したとはいえ、ペルソナの生成にかかる手順や時間は変わりません。慣れれば数分程度でつくれます。ペルソナは何度も収録し直すことができて、作成する時の髪型や服装が反映されるので衣替えも楽しめます。

 メガネの種類が色やサイズだけでなく、フレームの形状や素材も含めて細かく選べるようになりました。自分が普段かけているメガネに近いデザインが選べるようになると、ペルソナがいよいよホンモノっぽく感じられます。

 一方で、ペルソナに肌のシミまでリアルに再現されてしまうことがうれしくありません。あらかじめ顔にコンシーラーを塗ったり、準備してからペルソナを撮影しなければならないので、ぜひ次のアップデートで不自然にならない程度の美肌加工機能を追加してもらいたいです。

ペルソナに装着するメガネのデザインがこだわれるようになりました。髪型や服装を変えたり、メイクをする機能はありません

 今回は同時期に新しいApple Vision Proをレビューした西田宗千佳氏、松村太郎氏、村上タクタ氏と4人でFaceTimeビデオ通話をしてみました。口もとや表情の細かい動きと完全に同期しながら、各人のペルソナがいる方向からクリアな声が聞こえてきます。ペルソナどうしで目を合わせながら話していると、もはや現実世界で対面しながらミーティングしている状態と変わらない感じがします。

 現在は頭と肩あたりまでの画像と、手の動きだけがペルソナに反映されますが、いずれは全身をスキャンして空間に投影したり、手にスマホやマグカップを持っている状態まで再現できれば、いっそうリアリティが増すでしょう。SF系のアニメや映画の世界で描かれてきたバーチャル空間の中での電脳会議が、いよいよ現実のものになろうとしています。

最新の環境テーマ「ジュピター」。宇宙空間に浮かぶ松村氏と筆者

ハイタッチを交わす西田氏と村上氏。手のひらが重なるとピンク色の光が放たれます。当たり前ですが「あったかくなる」的なエフェクトはありません

FaceTimeビデオ通話内でコンテンツを共有する時のシアターモード。参加者一同の配置が向かい合わせから横並びになります

M5チップ搭載による軽快なレスポンス

 Apple M5チップは演算処理性能と駆動効率を高めて、AI系タスクへの対応力を強化しています。Apple Vision Proは10コアのCPUとGPU、16コアのNeural Engineに16GBのユニファイドメモリを統合したM5チップを採用しています。

 さらにApple Vision Proが搭載する各種センサーの入力を統合・制御するための専用チップ「Apple R1」とのツインチップ仕様です。R1チップは前世代から変更していません。

 M2搭載Apple Vision Proと使い勝手を比較してみました。2D静止画を立体視できる空間シーンに変換したり、visionOS 26からの新機能である「ウィジェット」の空間配置のレスポンスは新しいM5搭載機がわずかに速くなる手応えがあります。

右がM5、左がM2のApple Vision Pro。見た目には変わっていません

 Apple IntelligenceのAIモデルを使うImage Playgroundアプリから、画像を生成するスピードを新旧Apple Vision Proで比べてみました。同じキーワードとテーマを指定して画像生成を始めると、こちらも僅差ではあるもののM5搭載機の方がリクエストした画像を速く描き終わりました。M5チップの余裕が実感できます。

Image Playgroundアプリで画像を生成。M5機の方が若干生成が早め

 Apple TVアプリには、Apple Vision Proでイマーシブな映像をオーディオが楽しめるコンテンツが続々と増えています。新旧Apple Vision Proで映像を見比べると、新しいM5搭載機の方が映像のチラつきが抑えられていてスムーズな感じがしますが、M2搭載機の画質が劣っているような印象はまったくありません。

 180度の8K3D撮影フォーマットで収録されたApple Immersive Videoのコンテンツに、身体ごと飛び込みながら視聴するような体験には、ほかのデバイスでは得られない魅力があります。

 Apple Immersiveのビデオコンテンツの新しい試みとして、スポーツの生中継がApple Vision Proで楽しめるようになることも発表されました。アメリカのスポーツ専門ストリーミング局であるSpectrum SportsNetがvisionOS向けに提供するアプリから、NBA(バスケットボール)の試合をイマーシブ映像として制作して生配信をするそうです。タイトルは「The Los Angeles Lakers in Apple Immersive」。

 視聴はNBAアプリからも可能になるそうですが、生放送が見られるエリアは米国内、あるいはレイカーズの試合の放送エリアなど制限がかかりそうです。日本では、Apple Immersiveでのフル試合の再放送と、ハイライトがNBAアプリで楽しめるようになる予定。日本のプロ野球観戦は最近の筆者の唯一の趣味です。仕事が立て込む時期にはなかなか球場まで足を運べないので、代わりに自宅でゆっくりとApple Immersiveによる生中継が観られたら最高です。ぜひ日本のNPBにも空間コンピューティングによる次世代のエンターテインメントにチャレンジしてほしいです。

Apple TV+のイマーシブ対応コンテンツが続々と追加されています

 M5搭載Apple Vision Proは前世代のモデルから価格を据え置き、59万9800円で発売されました。気軽に手に取って買えるデバイスではありませんが、まだ触れたことのない方は、取り急ぎApple Storeで最新のM5モデルのデモを体験してみることをオススメします。

筆者紹介――山本 敦
 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

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