ケータイで生放送が見られる?
ドコモのニコモバアプリは凄い
ドコモ版アプリで6月からテスト的に提供してきたケータイ向け生放送。7月からは運営側が提供するチャンネルだけでなくユーザー生放送にも対応し、8月3日からはコメントもケータイから読み書きできるようになった。いよいよ本格的にモバイルで生放送を楽しむ環境が整ったのである。ちなみにプレミアム会員以外のユーザーも3分という「視聴限界」付きながら生放送を楽しめる。
最近の生放送のトピックはやはり皆既日食だ。ニコニコ動画では小笠原諸島の母島から皆既日食の映像を生中継したが、齋藤Pは「こういうコンテンツは生放送のあるべき形かな」と語る。
また、生放送を見ているユーザーに、PCだけでなくモバイルからも流れ込む事による変化にも期待を寄せる。
「同じ生放送を見ているPCユーザーもモバイルユーザーもコメントが入れられます。ただモバイルだと若干コメントがずれたりします(現在は30~40秒程度)。ともすると空気が読めない感覚が生み出されますが、モバイルから書き込まれたコメントにはアイコンが出ます。ここにニコニコっぽいカオスが生まれます。モバイルユーザー降臨動画が増えてくれば、モバイル版を使う契機としての生放送の存在も有効ではないかと考えています」(齋藤P)
技術的にはどのように実現しているのだろうか。
「ニコニコ動画モバイルで提供してきた動画のオンデマンド配信部分を大きく改修することなく、生放送向けに作り替えて実現しました。具体的なデータの流れはPC向けに配信される動画のデータを取り込んで、モバイル向けに変換して配信しています。端末は通信し続けるのではなく、サーバーからデータをある単位で固めて送り出すのを繰り返しています。これは通常の動画と同じで、生放送だから変わったわけではありません。理論値では3000人まで視聴可能ですがサーバの増設などで対応人数を増やせます」(宮本氏)
また生放送のコンテンツについてはどうしていくのだろうか。
「生放送はコンテンツを売りにするのではなく、ザッピングの感覚が大切。モバイル版は公式コンテンツなので、公式の生放送を見てもらえるように誘導するべきなのかもしれません。でもユーザーの生放送でも人気のある“生主”をフィーチャーするのもよいかもしれません」(齋藤P)
「ただ、運営から何かを提供するよりも、ユーザー同士で面白い番組を発掘してもらえないか、と考えています。運営が何かやるとお叱りを受けます。ユーザーが応援しているモノを押すというかたちで生放送の仕組みを使ってもらえるようにしていきたいです」(宮本氏)
ニコニコ動画のコミュニティーをより一般化していくこと、そしてモバイル動画環境に新しい「生放送」という風を導入していく事。ニコニコ動画モバイルの生放送には、さまざまな期待が込められている。
あなたも“生主”になって、同時多発的な生放送をする日が来るかもしれない。そういった「ソーシャルなキャスト」とも言うべき現象をいかに楽しめるか。もう1歩進めれば、何らかの社会関係資本に昇華させられるのかどうか、より多くのメディア体験が我々に求められている。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。