松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析

アップル「韓国離れ」か? 日韓問題で注目 (4/4)

文●松村太郎 @taromatsumura

2019年07月23日 11時00分

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●マイクロLEDへの動向も注目

 しかし有機ELディスプレーも今後永続的に続く技術ではないと言えます。アップルを含む各社は、微細なLEDを敷きつめてディスプレーとする「マイクロLED」に注目が集まっています。

 マイクロLEDは自発光でカラーフィルターや偏光板などを必要としないため、輝度、コントラスト、応答速度、消費電力、寿命という、これまでのディスプレーの不満点を解消する表示技術です。

 しかし単純に1画素あたり3色のLEDを敷きつめるとなると製造に膨大な時間がかかるため、ウエハー上に3色のLEDを作ってそのまま利用する製法などが検討されています。

 こうした次世代技術のディスプレーが登場するのはまだ先となりますが、たとえば有機ELディスプレイでも現在の蒸着式から印刷式での製造に変わり、大型のパネルの価格が下がってくると、iPhoneだけでなくMacへの採用が進むことも期待できます。

 特にMac向けにはこれまで、iPhoneと同様に高精細・高色域のRetinaディスプレーを液晶で実現してきましたが、iPhoneは有機ELへ移行し、コントラスト比100万:1を実現するようになりました。

 このコントラスト比にマッチするプロ向けディスプレーとして、Appleは2019年6月のWWDCで「ProDisplay XDR」という、100万:1のコントラストを実現する6K液晶ディスプレーを発表しました。

 しかし価格は50万円を超え、発熱量から同じ輝度を実現するディスプレーを現在のデザインのiMacやMacBook Proに搭載することはあまり現実的ではない、と考えます。有機ELやマイクロLEDの技術は、引き上げられたアップルのディスプレーのスタンダードを実現するために必要といえます。

 アップルは米中問題、日韓問題によるサプライチェーンの調整をすることと、同社の製品のスタンダードを高めることを同時並行でやっていきます。そのため、意外なほどに臨機応変な対応を、世界最大規模でとっていくことになるでしょう。

 しかし、繰り返しになりますが、やはり国際関係が安定していることが、アップルにとっても、サプライヤーにとっても、同社の製品を待つ消費者にとっても、最も好ましい環境であることは間違いありません。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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