山根博士の海外モバイル通信

手のひらサイズの超小型端末「Qin K25」はキッズフォンを超えたAIスマホだ!

文●山根康宏 編集●ASCII

2025年10月17日 12時00分

DuoQinの「K205」

 DuoQin(多親科技)というスマートフォンメーカーを覚えている人はいるでしょうか? シャオミも出資しているメーカーであり、小型の縦ワイドスマートフォン「Qin 2」やテンキー付きスマートフォン「F22」、小型ゲーム端末のような「K201」など、特徴的な製品を次々と送り出していました。

 主に学生やシニアをターゲットにした製品だったものの、他社にない製品は日本の一部のマニア層からも注目を受けたものです(ゲーム機みたいなミニケータイと、iPhoneを目指した中華スマホの関係とは)。

画面アスペクト比が22:9の小型スリムスマホ「Qin 2」

 筆者も過去に上記の記事を書きましたが、その後の新製品として2023年3月に発表した「Qin3 Ultra」は、5.02型の小型ディスプレーを搭載、アスペクト比は19:9と一般的なスマートフォンと同じ形状となりました。すなわち最大の特徴はその小さなサイズだけとなり、デザイン上の特徴はなくなってしまったのです。

 なお、親のスマートフォンからのトラッキング機能、使用時間制限がかけられるなど、過去製品同様に子供向けの機能は充実していました。

 ところがこのQin 3 Ultra以降、新製品の投入はなく、市場からすっかり忘れられた存在になっていたのです。

5.02型画面の「Qin 3 Ultra」

 子供向けというニッチな製品は、毎年新製品を出す分野のモデルではないのかもしれません。しかし2年間も何も動きがないと、もう新製品は出さないのだろうかと心配になってしまいます。

 と思いきや、2025年の夏に新しいモデル「Qin K25」を発売し、子供向けスマートフォンメーカーとしてまだまだ健在であることをアピールしてくれました。

2年ぶりの新製品だ

 Qin K25は本体の左上が猫の耳のように出っ張った形状が特徴で、この部分の裏側に800万画素のカメラを搭載しています。ディスプレーサイズは3.54型とさらに小さなサイズとなりました。本体サイズは97.6×59.5×11.7mmで、大型サイズのスマートフォンと比べるとかなり小ぶり。重量は94gでこれまた軽量です。

 チップセットはMediaTekのHelio G89、メモリー4GB、ストレージ128GBで通信方式は4G対応と、性能的にはエントリー以下のモデルです。価格は779元、日本円で約1万7000円。

Pro Maxクラスのスマホよりもかなり小さい

 ですが、子供用スマートフォンとして考えればこの性能でも十分かもしれません。Qin 3 Ultra同様に親のスマートフォンと連携して位置を確認する機能もありますし、独自のアプリストアでは学習向けアプリが多数提供されているとのこと。

そしてスマートフォンの1日の使用時間帯や、アプリごとの利用可能時間、インストール可能アプリの制限などもできます。バッテリー容量は2150mAhと小さいものの、本体スペックが低いので1日は十分使えるでしょう。

低スペックのため、このバッテリーでも十分使えそう

 またシャオミとの関係から、シャオミの開発したAIアシスタント「小愛同学」を搭載。音声を使って天気予報やニュースを確認したり、「世界の国の数は?」のように学習に関わる質問もできます。

 それだけではなく「エアコンの電気を入れて」といった、シャオミのスマートホーム製品との連携、さらには「明日8時に起こして」とアラームをセットする事も可能です。このあたりの機能はシャオミのスマートフォンと同等レベルなのです。

 ただしクラウド経由で利用するため、4G接続時は多少のタイムラグがあるでしょう。

シャオミと同じAIを搭載

 DuoQinの過去のスマートフォンは「子供が持てる小型サイズ」「年配者でも操作が簡単」をウリにしていました。しかし、最後のモデル「Qin 3 Ultra」が登場してから、その後の2年間でAI技術が大きく進化したことで、「手のひらサイズのAI端末」として使える製品に生まれ変わったのです。カメラが飛び出たデザインも、片手で保持する場合に持ちやすい形状と言えるでしょう。

実はAIスマホとして使いやすい大きさだ

 以前、シャオミが中国で販売するAIグラスの簡単な体験記事を書きましたが、シャオミの独自AIアシスタントである小愛同学は現在は中国のみ。中国語だけの対応となっています(AIスマートグラス対決! HTC「VIVE Eagle」とシャオミ「Xiaomi AI Glasses」を比較した)。

 この小愛同学がグローバル対応したら、Qin K25も海外向けにキッズAIスマートフォン、または一般ユーザー向けにAI端末として売り出すこともできるでしょう。あるいはグーグルのGeminiが動かせたら、ポケットサイズのAIスマートフォンとしてサブ用途に持つこともできそうです。

 そのような未来が来ることは今のところなさそうですが、このQin K25を参考にして小型のAIスマートフォンをどこかの企業が製品化することもあるかもしれません。

筆者紹介───山根康宏


 香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど取材の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から100万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。

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