山根博士の海外モバイル通信

「メイド・イン・サウジ」中東で作られたタフスマホをドバイで発見!

文●山根康宏 編集●ASCII

2025年11月03日 12時00分

SAUDI MADEをうたうスマホ

メイドインサウジをうたうスマホが登場
でもエンタープライズ向け

 スマートフォンの生産国と言えば中国、ベトナム、インドなどが主流ですが、中東のサウジアラビアで作られた製品もあります。ドバイで10月に行なわれた展示会「GITEX 2025」の会場に展示されていました。

 いったいどのメーカーの製品かと思いきや、実はこれは一般消費者向けではなくエンタープライズ向けの製品。ハネウェルのブースに展示されていた、業務用の小型コンピューターとして販売されている製品です。

GITEX 2025のハネウェルブース

 ハネウェルの「ScanPal EDA57」はチップセットにSnapdragon 480を採用する5G対応のAndroidスマートフォン。OSはAndroid 12で出荷され、現在はAndroid 14までのアップグレードに対応予定。外観はタフ仕様のスマートフォンといった感じで、実際にこれを日常的なスマートフォンとして使うこともできます。

ScanPal EDA57

 しかし、背面を見ると普通のスマートフォンとはまったく異なる外観をしていることがわかります。名前の通りハンディースキャナーを内蔵し、倉庫などでバーコードを読み込み在庫管理用途などに使うことができます。スピーカーが大きく見えるのは騒音のある屋外環境でも円滑に音声通話ができるようにしているのでしょう。

 なお、背面カメラは1600万画素。バッテリーは脱着式で、背面カバーを外すことで4500mAhのバッテリーを交換できます。

背面デザインはいかにも業務用といった感じ

 IP67の防塵防水性能を備え、また1.5m(ラバーブーツ装着時は1.8m)からコンクリートへの複数回落下に耐えるMIL-STD 810G準拠の堅牢性を実現しています。ディスプレー表面もGorilla Glass 5でカバーされ、傷や衝撃から保護します。

現場作業向けのタフな仕様

サウジアラビアが脱石油経済依存戦略のひとつの取り組み

 そして、この端末はサウジアラビア製であることも特徴です。その背景としては、サウジアラビアが脱石油経済依存を目指して進めている国家戦略「サウジ・ビジョン2030」の推進の1つに、海外企業に対し国内での製造を奨励。サウジアラビア製品のブランド力を高め、国際市場での競争力を進めています。グローバルで産業系製品を展開するハネウェルにとっても、サウジアラビアでの製品製造はメリットのあることなのでしょう。

サウジアラビア政府の意向とハネウェルの国際戦略が合致

 中東とアフリカを合わせたMEA(Middle East Africa)地区は経済発展が進んでおり、スマートフォンの出荷量も全世界の約1割に達しています。現在はまだ産業用製品だけですが、いずれは中東市場向けのスマートフォンもサウジアラビアで製造される日がくるかもしれません。

いずれは中東産のスマホも出てくるだろう

筆者紹介───山根康宏


 香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど取材の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から100万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。

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