「ブランドの世界観を日常に持ち込める」
この3G版PRADA phoneは、ブランドの既存顧客への満足度と、「もっとも洗練された市場の1つ」である日本のケータイ事情にキチンと対応している点で、多くの人に受け入れられるものと思われる。
しかし、個人的に気になったのはiPhoneとの比較だ。PRADA phoneの発表パーティーで「New Experience」という言葉を何度か耳にしたが、iPhoneと比べると、タッチパネルの操作感やフル環境のインターネットを持ち出す、といったテクノロジーを基盤とした「New Experience」を打ち出せているわけではないようだ。
さらに言えば、ガラスと金属の高い質感を生かしたiPhoneやiPod touchを触っていると、プラスチックをベースとしたPRADA phoneの素材選びは少し残念だった。
重さや電波受信、製造コストといったさまざまな要素とのバランスではあるが、PRADA phoneにモノとしての高級感をあまり感じられない人もいるだろう。あくまで「ブランドの世界観を日常に持ち込める」というところを楽しむ端末なのかもしれない。
欲を言い出せばきりがないのだが、とにかく注目すべきポイントは、ケータイが「ブランドを生活に持ち込む媒介物」になっていることなのだ。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。
*次回は5月22日掲載予定