松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」

Adobe Flashが照らすモバイルの新世界 (3/4)

文●松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

2009年03月14日 13時00分

世界の先進事例を作る日本のモバイル市場

 さて、話を日本に移す。日本で出荷されるほぼ全てのケータイに、Flash Liteが搭載されるようになった。主にケータイ向けのウェブサイト、簡単に遊べるゲーム、アニメーションやサウンド付きのデコメール、そしてに待ち受け画面やメニューなどに活用されている。

 MWC2009ではパートナーとして、日本からNTTドコモが登壇してニュースになった。ムラルカ氏はドコモ、そして日本のキャリアについての評価と要望について、次のように語る。

Adobe MAX Japan 2009の会場では、Adobeとの強い結びつきをアピールしていたNTTドコモ

 「ドコモは世界で非常に成功しているキャリアと言えます。モバイルにおけるFlashの新たな可能性を開いてきたのはまさに日本のキャリアでした。5年前にドコモが505iシリーズでFlash Liteを採用する時、毎月日本に来ては、マーケットやユーザー経験の進化に驚き続けていました。開発者がエコシステムを作り上げているのは、非常に輝かしいことだと思います」(ムラルカ氏)

NTTドコモが世界初のFlashLite1.0が搭載された505iを発表したのは、2003年5月。2008年冬モデルではすでにFlashLite3.1までバージョンアップした

 ムラルカ氏は日本のケータイでのFlashの使い方に精通しており、毎回来日するたびに アニメーション付きのメールやゲームなどのFlashコンテンツに触れ、 驚きを感じているそうだ。そしてこの成功を、展開しやすいプラットホームである点も指摘する。

 「Flash Playerを取り巻く環境や取り組みは、地域や視聴者、キャリア、端末、開発者などによって異なっています。ただ、開発者が素晴らしいコンテンツをどのように作り出せるのか、という点も、成功の度合いを測る手段ではないでしょうか。世界で共通のプラットホームであり、モバイルだけでなくデスクトップやテレビでも利用できる、クロスプラットホームも実現しています」(ムラルカ氏)

AIRアプリも積極的にモバイル展開を図っているAdobe

オフラインでも使用できる点は大きなメリットだろう

 これはすなわち、日本でユニークなコンテンツをケータイ向けに提供出来ている開発者が、将来的には世界各国のモバイルユーザーに対してコンテンツ提供ができるようになる可能性を示唆するモノだ。

 現在、世界共通でかつ、課金も可能にしたプラットホームであるiPhone向けのアプリでの日本人の活躍が光るが、Flashについても同様の展開が、iPhoneを持たないより多くのユーザーに対して可能である事を示している。

 ただ、Adobeとしてはコンテンツを販売する場は現在考えていないという。デベロッパー同士、ユーザー同士が面白いコンテンツを教えあうコミュニティが自発的に形成されており、こういうコミュニケーションを大切にしていきたい、と考えている。

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