位置情報を活用するには課題もある
何を出すべきか出さざるべきか
BrightKiteやTwitterは一般的なウェブサービスで、ユーザー名とメールアドレスで管理される。BrightKiteとTwitterの間はTwitterのユーザーIDとパスワードでBrightKiteに書き込みの許可を与えて連携させるという仕組みを持っている。つまりBrightKiteには自分の位置情報付きの行動ログとTwitterへの書き込み権限を与えるという重大な役割を任せていることになる。
そう考えると、誰が情報を預かっていてくれるのかがかなり重要なのだ。
もちろんすべてウェブサービスを信頼して使っているか、と言われたらそうでもないし、写真のデータはFlickrと手元のHDDのバックアップで二重化している。ただ位置情報付きの行動ログをストレスなく手軽に集めておく手段は今までなかなか良いモノがなかった。またログを手元に残しておき、見たい時にすぐにプレビューできる状態にしておく、というツールもあまり無い。
ケータイはいつでもどこでもパケット通信でウェブやメールにアクセスできる魅力を持っている。この魅力をコンピューターサイドから取り込んだのがiPhoneであり、日本のケータイからのウェブアクセスのあり方やビジネスモデルがかすみそうになっている。
しかし自分の位置情報の管理やコンテンツの課金システムをキャリアが責任を持って行なってくれる、という点に着目すると、日本のケータイのアプローチも再び注目を集めるのではないだろうか。
自分の行動に関する情報を自在に操る術を手に入れることを前提として、それをプラットホームとしたまったく新しい情報基盤ができあがるとしたら、それはとても魅力的な近未来の姿だ。その一例として、自分のこれからの行動に関連した情報を提供してもらうサービスを考えてみよう。
たとえば都内を移動する乗り換え案内を検索したとする。これは実は立派な行動予測(予定)のデータだ。そこで、最も早く着くルートに日比谷線日比谷駅とJR有楽町駅の屋外の徒歩ルートが含まれていたとき、天気が気にならないだろうか。
このとき、乗り換え予定時刻が分かっているのだから、気象予報サービスの情報を参照して、雨が降りそうなら時間が少し余計にかかっても、雨に濡れずに乗り換えられる駅をレコメンドしてくれた方がよいように思う。このとき乗り換え案内での時間と場所の情報とともに、天気予報というやはり時間と場所の情報をミックスする必要がある。
ウェブサービス同士なら勝手にAPIで握って情報のやりとりをすれば実現できる。しかしここで信頼性ある位置情報プラットホームの上で、いわゆるiモード型の公式コンテンツ間での情報のやりとりが行なわれる方が安心してマッシュアップサービスが使えそうなものだ。
とはいえ、ユーザーから許可を取って位置情報関連のサービスを提供しているドコモのiコンシェルですら、ユーザーから「行動を監視されているようだ」というフィードバックがあるくらいで、位置情報をトラックしてそこに対して情報提供をしたり、コミュニケーションを交わす種類のサービスにおける抵抗感、難しさは存在している。
コミュニケーションのおもしろさによる「マヒ」(いわゆるダダ漏れOK)がなければならないのと同時に、位置情報をどこまで教えてもいいか、どこからは隠すべきか、という線引きができるようにならないと、文字通り操ることはできない。
BrightKiteには、右上にカギのマークがあり、緑はパブリックモード、赤にするとプライベートモードになり、Twitterには出力をしなかったり、他のユーザーから見えなくなったりするモードが用意されている。ただ多くのユーザーは、プライベートモードにすべきところではBrightKiteを使わない、という運用をしているのではないだろうか。
自分のライフログを克明に残して、後から活用したいなら、このモードの使い分けをもっと実践し、何を見せるのはよくて、そうでないものは何かを考えていく必要があるだろう。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。