山根博士の海外モバイル通信

ファーウェイがクレカビジネスに参入、Apple Cardとは違うアプローチ

文●山根康宏 編集●ASCII

2020年05月08日 10時00分

ファーウェイもついにカードを発行

アップルに対抗!?
ファーウェイからクレジットカード登場

 ファーウェイの春のフラッグシップモデル「HUAWEI P40シリーズ」のグローバル向け発表会は3月26日にオンラインで開催されましたが、中国国内向けには別途4月8日に同じくオンラインで行なわれました。中国国内で発表されたモデルはグローバルと同じ「HUAWEI P40」「HUAWEI P40 Pro」「HUAWEI P40 Pro+」の3機種ですが、発表会では中国向けとなる新サービスも発表されました。それが「HUAWEI Card」です。

 HUAWEI Cardはファーウェイのペイメントサービス「HUAWEI Pay」と紐づけできる物理的なカードです。アップルの「Apple Pay」と「Apple Card」(日本未登場)の関係に似ています。カードには名前のみが印刷され、番号の表記はありません。なおHUAWEI Payは現時点ではまだ中国・香港・マカオ・ロシアでしかサービスはされておらず、HUAWEI Cardの発行も中国国内のみになるようです。

ファーウェイのスマホからオンライン申請で申し込む方法になるが、中国外での提供は未定

 そもそもモバイルペイメントが進む中、物理的なカードを使うなんて時代錯誤という考え方もあります。しかしApple Cardがブランド力を武器にプレミアム感をユーザーに与えているように、ファーウェイとしてもあえてカードを出すことでユーザーロイヤリティーを高めようと考えているのかもしれません。

 HUAWEI Cardは中国で老舗のペイメントサービス「Union Pay」(銀聯)と提携。おそらくクレジットではなくデビットカードとしての利用になると思われます。最大の特徴は空港や高速鉄道駅のラウンジを利用できる権利。黒一色のブラックカードをラウンジで提示する、これは一種のステイタスにもなりそうです。とはいえHUAWEI Cardはスマートフォンの中にも入れられます。他にもポイントがたまるなどの利点もあります。

Huawei Cardは優待を得られる。バーチャルカードでも利用可能

 中国ではすでに「スマホで支払い」は当たり前になっています。モバイルペイメントサービス「WeChat Pay」「Alipay」はどちらもQRコードで手軽に支払いができ、利用できるエリアは中国国内だけではなく世界中に広がっています。日本でもこの2つを利用できるお店は数多く見られます。

 一方、この2大ペイメントサービスが普及するはるか前から中国ではUnion Payが普及していました。Union Payは物理的なカードで、銀行のキャッシュカードと連携も行ない中国最大のペイメントサービスになりました。ちなみに、海外では今でもUnion Payのみに対応、という店舗も少なくありません。ところがモバイルペイメントサービスの登場でUnion Payの利用者はここ数年減っています。そしてUnion Payも今ではモバイルペイメント分野に進出を図っており、ファーウェイとの提携で利用者増を目指そうとしているのでしょう。

日本でも中国のモバイルペイメントはおなじみだ。Union Payに対応する店も古くからある

 ファーウェイは引き続きHUAWEI Pay対応国で利用可能店舗の拡大を図るでしょうが、すでにUnion Payに対応した店舗でも利用できるHUAWEI Cardの発行で、自社のペイメントサービスの利用者を増やすことができます。Union Payとの提携は両者にとって大きなメリットがあるわけです。

HUAWEI Payの利用者拡大はファーウェイにとって急務

 スマートフォンから始まったファーウェイのコンシューマー向け製品は、今ではPC、ウェアラブル、スマートIoT機器など幅広い分野に広がっています。誰もがスマートフォンを持つ今、次なる市場としてモバイルペイメント分野に参入することは必須とも言えます。中国人の消費パワーを背に、HUAWEI Cardが中国で大きな存在になる可能性は大いにありそうです。

ペイメント市場への参入はファーウェイの次の野望だ

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