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「GPD Pocket 3」実機レビュー=これで8万円台は魅力! 8インチの激小モバイルノートPCの実用度を試した

文●写真 ジャイアン鈴木 + 編集● ASCII PowerReview軍団

2022年01月31日 13時00分

ディスプレーには180度の前後角度調整、180度の水平回転に対応した2軸ヒンジが採用されている

前後、水平180度の調整に対応した2軸ヒンジ機構により、ノートPC、テント、スタンド、タブレットスタイルで利用できる

ディスプレーは10点マルチタッチ操作とMicrosoft Pen Protocolに対応。同規格の「Surfaceペン」などを利用できる。筆圧検知は4096段階をサポート

 8型UMPCということでキーボードのキーピッチは16mmとやや狭いが、キー間に隙間を設けたアイソレーションタイプなので意外と打ちやすい。ストロークはやや浅めだが、打鍵感は良好だ。ただしキー配列については少々慣れが必要。

 一般的なキーボードであれば、カタカナ語で多用する「-」(ハイフン、音引き)キーは「P」キーの右上に配置されているが、GPD Pocket 3では数字キーを挟んで「6」キーの上に位置している。長文入力マシンとして本製品の購入を検討しているのなら、キー配置をよく観察して、タッチタイピングをマスターできるかどうかシミュレーションしておこう。

キーピッチは実測16.2mm前後

キーボードにはバックライトが内蔵。明るさは調整できない

電源ボタンは指紋認証センサー一体型

 一方、キーボード奥に設置されたクリックボタン、タッチパッドの操作感は個人的には気に入った。両者は一般的にはキーボード手前に配置されているが、ここまで大きく配置が異なるのなら、逆に混乱することはない。

 またタッチパッドは実測62×33mmとボディーサイズにしては広めに確保されており、3本指操作にも対応している。GPD Pocket 2の光学式ポインティングデバイスより操作性は格段に向上していると感じた。

クリックボタン、タッチパッドがキーボード奥に設置されているが、一般的なノートPCと比べても大きな違和感はない。なおタッチパッドは3本指操作に対応する

クリックボタン、タッチパッドは両脇からつかんだ状態でも操作しやすい。手の大きな筆者なら(手の長さ約20cm)、多少持ち替える必要はあるが親指ですべてのキーを押すことができる

 ディスプレー品質については、カラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で実測したところ、sRGBカバー率は80.6%、sRGB比は82.7%という値が出た。最近の同価格帯のモバイルノートPCと比べると色域はやや狭いが、RAW画像の現像やカラーグレーディングなどに使うのでなければ十分実用レベルだ。

カラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で実測したところ、sRGBカバー率は80.6%、sRGB比は82.7%という値が出た

色域は決して広くはないが、鮮やかに画像、映像を表示可能

 GPD Pocket 3はUMPCとしては珍しく200万画素のウェブカメラを内蔵している。もちろんマイクも搭載しているので、単体でビデオ会議などに利用できるわけだ。

 室内灯下でも比較的明るく、自然な発色で撮影が可能だが、ウェブカメラがディスプレー左上に内蔵されているため、本機の正面に座った場合には顔がずれて写ってしまう。あと、欲を言えばもうちょっと広角のほうが(相手にとって)嬉しいところ。ズレと画角の問題については、設置する距離、角度で調整しよう。

ディスプレー左上に200万画素ウェブカメラを内蔵

Windows 10の「カメラ」アプリで「HDR pro」を有効にして撮影。室内灯下でも比較的明るく、自然な発色で撮影可能だ。ただしカメラがディスプレー左上に内蔵されているので、本体の角度を調整しなければやや左寄りに撮影されてしまう

お求めやすい下位モデルだが、パフォーマンスはどうなのか?

 さて最後にパフォーマンスをチェックしよう。とは言っても今回借用できたのはPentium Silver N6000搭載モデル。下位モデルで実用的なパフォーマンスを得られるのかという視点からご覧いただきたい。

 まずCPU性能については、「CINEBENCH R23」のCPU(Multi Core)は2369pts、「同R20」のCPUは918pts、「同R15」のCPUは408cbを記録した。Core i7-1195G7を搭載する「ONEXPLAYER 1S(Super Edition) 国内正規版(1TB)」が5715pts、2208pts、923cbだったので、Pentium Silver N6000搭載モデルはその約41%、約42%、約44%のスコアということになる。スレッド数の差がストレートに表われた結果だ。

「CINEBENCH R23」のCPU(Multi Core)は2369pts、「同R20」のCPUは918pts、「同R15」のCPUは408cb

 つぎに3D性能だが、「3DMark」のTime Spyは420、Fire Strikeは1215、Wild Lifeは2933を記録した。ONEXPLAYER 1Sが1834、5295、11681だったので、Pentium Silver N6000搭載モデルはその約23%、約23%、約25%のスコアということになる。3Dゲームをプレイしたいのであれば、内蔵グラフィックスにIntel Iris Xe Graphicsを搭載するCore i7-1195G7搭載モデルを選ぶべきだ。

「3DMark」のTime Spyは420、Fire Strikeは1215、Wild Lifeは2933

 ストレージ速度は、「CrystalDiskMark 8.0.4」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は1409.20MB/s、ライト(SEQ1M Q8T1)は1190.32MB/s。最新マシンとしてはやや物足りないが、実際の使い勝手を左右するほどのボトルネックとはならないはずだ。

「CrystalDiskMark 8.0.4」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は1409.20MB/s、ライト(SEQ1M Q8T1)は1190.32MB/s

 バッテリー駆動時間は、ディスプレー輝度40%で「PCMark 10 Modern Office Battery Life」を実行したところ8時間14分動作した。カタログスペックの最大約15時間には届かないが、モバイルに特化したUMPCとして実用十分な動作時間が確保されている。

ディスプレー輝度40%で「PCMark 10 Modern Office Battery Life」を実行した際のバッテリー駆動時間は8時間14分

Pentium Silver N6000搭載モデルはモバイル用途に適したマシン

 GPD Pocket 3は、スタンダードUMPCのGPD Pocketシリーズ、エンジニア向けUMPCのGPD MicroPC、ノートPCに限りなく近い8.9型「GPD P2 Max」を組み合わせた「完璧なデバイス」として企画、設計されたとアピールされている。

 確かに、2 in 1 PCとしての変形機構を採用しつつ、豊富なインターフェースを搭載し、上位モデルにはハイパフォーマンスなCore i7-1195搭載モデルを用意したGPD Pocket 3は、8型UMPCとしてスキがなく、多くの方にとって理想の存在だ。

 そして今回レビューしたPentium Silver N6000搭載モデルも一般的な用途なら十分な速度なので、バッテリー駆動時間が長いぶん、上位モデル以上にモバイル用途に適したマシンである。

 

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