末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢

ドコモ完全子会社で揺れるモバイル業界、英国とフランスのキャリアの歴史を見る (2/2)

文●末岡洋子 編集● ASCII

2020年10月10日 10時00分

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Free Mobileの新規参入で3社から4社になったフランス
大激動の英国に対し、日本に少し似ているようにも見える

 つづいてフランス。France TelecomがNTTに相当する存在だ。France Telecomはモバイル事業をOrangeとして展開。その後インターネット回線、固定電話、IPTVを含む「トリプルプレイ」でOrangeブランドを用いている。現在は社名自体もOrangeに変更してしまった。

 フランスは長年、Orange、SFR、Bouygues Telecomの3社が安定してシェアを分け合ってきた。しかし、2012年に新規事業者としてFree Mobileがサービスを開始した。3Gと4Gのライセンスを取得しており、エリアについて規制当局の判断を受けるなどの準備を経ている。サービス開始当初はローミング契約のもとで、Orangeの回線を使っていた。

 Free Mobileは、固定回線のインターネットでフランスに重要な役割を果たしたIliadグループに属する。Iliadの固定インターネットサービスであるFreeは、まだFrance Telecomが「Minitel」(ミニテル)を提供していた2000年代初めにADSLによるサービスをスタート。月30ユーロ、最低契約期間もなければ、回線開設の手数料やモデムの料金もなしというシンプルさが受けた。

 私もフランス滞在時にFreeを使っていたが、当時その速度と安定性は群を抜いていた。固定電話の留守番電話のメッセージを自分のポータルから聞くことができるなど、サービスの使いやすさも秀逸。Iliadを創業したXavier Niel氏はフランスでは著名な起業家で、駅を改築したインキュベーションセンター「Station F」の創始者でもある。

 Free Mobileは今では、3大キャリア中、長年最下位だったBouyguesに並ぶ15%程度のシェアを獲得している。料金とビジネスモデル(SIMフリーのみなど)が受け入れられたこともあるが、やはり固定サービスで築いたファンの信頼性も大きいのではないか。

 このように、固定通信と移動通信の関係は切れない。日本市場は比較的穏やかに見えるが、5Gなどの技術革新だけではなく、人口の減少という構造的変化が控えている。NTTとNTTドコモの動向の余波が気になるところだ。

筆者紹介──末岡洋子

フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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