●これがコンピュータ、なのか?
iPhone 12シリーズ、iPad Airの登場と時を同じくして、Adobeは世界最大規模のクリエイティブカンファレンス「Adobe MAX」をオンラインで開催した。このなかで、iPadは、同社のモバイルクリエイティブの世界を担う重要なデバイスと位置づけられており、Photoshop、Lightroom、Premiere Rushとともに、第4の主要アプリIllustratorがiPadに移植された。
アップルはプロ向けのアプリをiPadに移植していないが、Adobeは着々とiPadに最適化する形で再設計したプロクリエイティブアプリの移植を進めている。すでにPCで仕事をしているプロにとって、iPad向けのソリューションはより高品質なペンの活用など、作業に生かせるサブデバイスとしての役割を存分に発揮してくれそうだ。
しかしAdobeがiPad対応を強めているのには、他の目的もある。サブではなく主たるデバイスとしてのiPadの可能性が、より広がっていくことだ。
現在タブレット市場は縮小し、Chromebookなどのキーボードがついた、より価格が安いデバイスが優勢となっている。積極的にこのカテゴリに取り組んでいる企業はアップルぐらいで、他のメーカーは別カテゴリにシフトしている様子が鮮明だ。
そうした中、コロナ禍、新学期需要などの要因も助け、iPadは直近2020年第4四半期決算で前年同期比46%増を達成している。iPadに対して再び注目が集まっている点は、iPadが手元にあるコンピュータとしてのポジションを拡大することにつながる。
そうした中で、同年に発売したプロモデルよりも高い性能を示すiPad Airを投入したことは、最も身近なコンピュータとしてポジションを固めに行く、非常に戦略的なモデルであると見ることができる。
iPad Airは、およそ、完璧に近いコンピュータの姿を見せてくれる。もちろんそこには、1万円のApple Pencilと3万円のMagic Keyboardを加える必要があるが、将来にわたって高い性能維持し続けてくれるコンピュータに、Adobeのみならず、熱い視線が注がれ続けることになる。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
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