末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢

今年6月のMWCはあくまでリアルで開催、強気の姿勢を続けるつもりか (1/2)

文●末岡洋子 編集● ASCII

2021年05月28日 12時00分

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 毎年2月末にスペイン・バルセロナで開催されてきたモバイル業界最大のイベント「MWC」(旧Mobile World Congress)。その時期はとっくに過ぎているのだが、今年は6月末に開催される。それもリアル(とオンラインのハイブリッド)開催。この判断に、地元からは「クレイジー」の声も聞こえている。

会期まで1ヵ月を切った状態だが、MWCは本当にリアルでイベントを開催する意向のようだ。サイトではレジストを済ませた参加者はスペイン入国が許可されることも紹介

9月のIFAはすでに中止発表でも
6月末のMWCはリアルでも開催

 ここ1年以上、イベントや発表会などの取材活動がほぼオンラインとなり、たまにリアルで開催されると驚きさえする。そのため5月19日に、ドイツ・ベルリンで毎年9月に開催されてきたIFAがキャンセルするというメールを受け取った時に、むしろそこまではリアルでやる気だったのかと思った。

 キャンセルの理由は、いうまでもなくコロナ禍の状況に見通しが立っていないためだ。「世界の各種健康指標が正しい方向に向けて高速に改善していない」「不確定要素が多すぎるため、責任ある計画をとることは誰にとっても難しい」とリリースには記されている(「指標(数字)」とか「責任」を根拠として記しているところが、いかにもドイツらしい)。

 驚いたのはその翌日のことである。MWCを主催するGSMAが記者会見を開き、「MWC21」を予定どおりに開催すると宣言したのだ。MWCの会期は6月28日から。中止を決めたIFAの2ヵ月前だ。

 現時点でMWC公式サイトに行くと、リアルイベントの登録が可能。オンライン(バーチャルパス)の登録はまだ始まっていない。

 GSMAによると、約600人のスピーカーのうち7割程度がリアルイベントに参加するとしている。たとえば、お隣のフランスを拠点とするOranceのCEO、さらにVerizonのCEOも出席することが明らかにされている。一方で、6月1日より「UnBoxed」としてバーチャルイベントを開くEricsson、そしてNokiaなどが出展を控えることになっている。シャオミも出展しない様子だ。

3~5万人の来場を見込む
今のバルセロナにそれだけの人が集まるのか?

 その5月20日は、ワクチン接種を終えた人は観光を含む不要不急の用事での域外からの渡航を認めると、EUが発表した日でもある。これを受けてEU加盟国が自国のルールを設けることになるが、スペイン政府は翌日、日本と英国からの旅行者は隔離や事前のPCR検査などの制限なく入国できるようにする(24日より)と発表している。すでに認められていた中国、オーストラリア、シンガポール、タイなどに加わった形だ(だが、日本も英国も現時点では帰国時に隔離が求められる)。

 GSMAは3月末から、リアルでの開催に向けて準備を進めてきたという。地元の医療サービスと提携し、バルセロナ市内に新型コロナのテストセンターを設ける、会場1300ヵ所に消毒液を設置する、MyMWCアプリで毎日健康についての質問をする、などの対策を明らかにしている。

 そして4月には、MWC参加者を(入国が認められる)”高度に熟練された労働者”扱いとするという約束をスペイン内務省と取りつけ、スペイン以外の人がMWCに登録すると、必要な情報をスペイン側と共有し入国をスムーズにするとも発表していた。

 5月20日の記者会見では、GSMA側は3~5万人の来場者を見込むと語ったそうだ。ここ数年、MWC来場者が10万人規模となっていたことを考えると、半減以下。それでも強気な数字には感じる。

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