Apple Intelligenceの機能が確実に快適に
Apple M5チップのパフォーマンスについてはベンチマーク計測の比較結果を紹介したかったところですが、先行レビュー期間にベンチマークソフトを使った計測は不可ということでした。そこで、Apple IntelligenceのImage Playgroundや、メモアプリで描いた大まかなスケッチから、iPadOSの画像マジックワンドを使ってイラストを生成する速度をストップウォッチで計測しました。11インチのM4搭載のiPad Proと比べています。
Image Playgroundでは同じキーワードと「テーマ」を設定して、2つのiPad Proで4パターンの画像候補を生成するまでの時間を測りました。M5搭載機は約14秒、M4搭載機は約19秒かかっています。
メモアプリによるドローイングは、超適当に描いた花のスケッチに「バラの花束」というテキストを添えて、まるっと画像マジックワンドで囲ってみました。こちらも生成までにかかる時間に、秒単位ですが差が開いています。M5搭載機は約15秒、M4搭載機は約22秒。筆者が所有するiPad ProがM4搭載機だったので、実力差があまり大きくなかったのだと思います。
もしこれが、Apple M1チップを搭載するiPad Proと比べていたら、より差は明らかだったかもしれません。なお、iPad ProでApple Intelligenceを活用するためにはM1以降のAppleシリコン搭載機が必要です。
アップル独自のモデムチップ「C1X」や
高速充電機能を搭載
M5搭載iPad Proがハードウェア的に進化したポイントもいくつかあります。
ひとつはWi-Fi+セルラーモデルに、Appleが設計したApple C1Xモバイル通信モデムチップを搭載したことです。今回はM5搭載iPad Proにソフトバンクのモバイル通信プランを投入して、本機の通信品質を体験しました。
5G SAネットワークにつながっている環境で、音楽配信ストア「Mora」で購入したハイレゾオーディオのアルバムをNePLAYERアプリでダウンロードしたところ、約2分27秒で全9曲、総容量2.4GBのファイルダウンロードが完了しました。
新しいiPad ProはWi-Fi 7、Bluetooth、Treadのワイヤレス通信を制御するApple N1ワイヤレスネットワークチップも搭載しています。このチップによる功績を計測して数値化する術を筆者はまだ知りませんが、iPad Proをビジネスシーンで、あるいはホームネットワーク機器の操作等に長く使うほどに快適さの実感を伴うのかもしれません。
ほかにもM5搭載iPad Proは別売りオプションのアップル純正「40Wダイナミック電源アダプタ(最大60W対応)」、または60W以上給電できるUSB-C電源アダプタを使うと、約30分で最大50%のバッテリーが急速充電機能を持ちました。筆者が手もとにあったアップル純正の70W USB-C電源アダプタで試したところ30分で36%のスピードチャージができました。
いまM4チップやM3チップを搭載するiPad Proをメインに活用しているユーザーは、現時点ですぐにM5搭載モデルへ買い替える必要まではないと筆者は考えます。一方で、M1チップやAシリーズのチップを搭載するiPad Proを長く使ってきた方にとっては、さらに使い勝手が向上したApple Pencil Proにも対応する最新のM5モデルに買い替える価値が存分にあると思います。
これから本格的に到来するAIコンピューティングの時代において、M5搭載iPad Proは長く信頼できるパートナーとして活躍してくれるはずです。

筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。