松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」

ドコモ無視or対抗 冬の時代をどう乗り切るか (2/3)

文●松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

2009年01月31日 15時00分

ドコモ意識! コンテンツの利用率向上を狙うソフトバンク

 ソフトバンクモバイルの発表会は、東京国際フォーラムホールAで行なわれた。キャパシティ5000人の大会場だ。プレスの他に、ソフトバンクユーザー3500人も招待され、新端末をプレゼンテーションしたのは吉本興業の「ケータイ芸人」。斬新なスタイルでの新製品発表会になった。

ソフトバンクの春モデル発表会は、5000人収容の東京国際フォーラムホールAで開かれた。ユーザーを招待したイベントは珍しい。開場と同時に一気に流れ込んできた

 余談になるが、スタイルとしてはテレビ朝日の「ロンドンハーツ」もしくは「アメトーーク」。ひな壇が用意されて芸人が座り、司会が仕切っていく、バラエティ番組でよく見かける風景がそこにあった。ソフトバンクのイベントなのに、孫正義社長が大御所ゲストのようなポジションに座っていたのもまた面白かった。

司会者のロンブーと談笑する大物ゲスト風の孫社長

ひな壇に座るよしもと芸人の皆さん

 芸人が1機種ずつ、ケータイの特徴を「プレゼン」していくスタイルは、普段の発表会よりも新製品が印象に残る。そしてユーザーが1つずつのプレゼンに対して拍手や笑いを送ると言う光景も新鮮だった。しかし、その端末の中身はドコモやauを強く意識した内容になっている。

ケータイ芸人が熱くプレゼンテーション。品川庄司の二人は930Pのダブルオープンについての驚きを紹介していた

世界のナベアツは932SHを紹介。Newサイクロイドとダブルワンセグチューナーなどの充実の機能を得意のギャグでプレゼン

 AQUOSケータイ「SoftBank 932SH」は、全く新しく美しい「Newサイクロイドボディ」「ダブル・ワンセグチューナー」「3スピーカー」「800万画素CCDカメラ」と、特徴的なデザインとスペックを搭載したフラッグシップモデルだ。

932SHはこれまでのAQUOSケータイの最高傑作と言えるだろう

 しかしそれ以外の端末は他キャリア向けの端末をそのままソフトバンク向けにカスタマイズされて登場した端末と見てすぐ分かる。例えば、VIERAケータイ「SoftBank 930P」「SoftBank 830N」「SoftBank 930CA」は、それぞれ、NTTドコモの「P-01A」、amadanaケータイ「N-04A」そしてauのEXILIMケータイ「W63CA」だ。もちろんドコモの発表会では芸人のプレゼンがなかったため、各端末の特色の伝わり方、印象はソフトバンクの方が強いかもしれないけれど。

「830N」(左)とamadanaスライドのドコモ「N-04A」(右)のタッチセンサー部分の比較

横からの比較。色やテクスチャ、ロゴ以外は全く同じ意匠が使われており、共通の仕様になっていることが分かる

 つまり、同じ(ような)端末が揃えて、ドコモに移る理由を1つ潰した格好だ。

 月額約5000円分のコンテンツサービスを月額315円で利用することができる「コンテ ンツ得パック」。毎日1対1のお笑いのネタバトルがメールで届き、ユーザーは無料で 視聴することができる「S-1 グランプリ」。ユーザーに投票してもらって月間・年間 のグランプリを決めるという後者の企画は、芸人・視聴者を含めた賞金総額2億2000 万円という驚きがあった。

「コンテンツ得パック」では、これだけの人気コンテンツが315円で楽しめる。このサービスの発表時、会場からは歓声が上がった

「S-1 グランプリ」の年間チャンピオンが手にする賞金は「M-1」10年分。ユーザーには1000万円が当たるチャンスも

 これらの施策は、キャリア同士の比較で低さが指摘されているユーザー1人あたりの通信費(ARPU)を高める狙いがあることは明らかだ。魅力的なコンテンツ群をお得に使えたり、ソフトバンクだけで視聴できる動画コンテンツを提供することで、パケット定額の上限まで通信を使ってもらおうとしている。

 インフラを圧迫する動画コンテンツの提供は通信品質の問題から諸刃の剣かもしれないが、会場に詰めかけたユーザーの反響は上々。つくづくプレゼンテーションのうまさを感じさせる発表会であった。

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