松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」

ドコモ無視or対抗 冬の時代をどう乗り切るか (3/3)

文●松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

2009年01月31日 15時00分

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意識するかスルーするか、気になるのはドコモの動き?

 今回の発表会でKDDIとソフトバンクの2社には、真逆な点と共通点があった。真逆な点は、「ドコモに対する意識」と「長期的なビジョンと短期的なイベントのどちらを重視するか」といった点だ。共通しているのは「既存ユーザーをアクティブに楽しませようとする点」である。

 auは、ドコモへの端末提供がなくなったソニー・エリクソンや、まだドコモに端末を提供していないカシオ、日立などのオリジナリティあふれる端末群、そして定評のあるデザインプロジェクトや新機軸として打ち出した「ニュースタンダード」などの製品ラインを持っており、端末の競争力が高い状態を取り戻しつつある。

 そして、魅力的な端末を入り口にして、充実のサービスを活用してもらうスタイルを確立している。最新の端末でなくても利用できるサービスを取り揃えているため、au独自の世界観としての「アンビエント社会」を具現化していく長期的な道を邁進していく事ができる。その過程の先にはLTE(Long Term Evolution)への移行を見すえる必要があり、ここがどうなるかは気になる点だ。

 一方ソフトバンクは2006年以降に機種変更した人のいわゆる「2年縛り」から解放されるユーザー買い換えのタイミングで「どのようにしてソフトバンクに引き留めるか」という課題への解答を出す必要があった。そのためドコモと同じメーカー、形状や機能の端末を投入して、ドコモを強く意識したラインアップを作り上げた。

 端末メーカーからすれば、開発コストの面でもありがたい話かもしれないが、ソフトバンクとしては、端末で差がないドコモを常に意識しながらサービス作りや価格設定をしていかなければならない事を意味する。そこで短期的で、話題性の高いイベントとしてS-1を投入した。

 そういった意味で、両社は端末の方向性については「ドコモを意識しない」auと「ドコモ対抗」のソフトバンク、「長期的なビジョン」を優先するauと「短期的なイベントによる話題性」を重視するソフトバンクと言える。

 また、共通点としてはデータ通信の客単価を高めようとしている点だ。auは「EZナビウォーク」「LISMO Video」などの既存サービスを拡張し、ソフトバンクはコンテンツを安く利用できる「コンテンツ得パック」で長期に利用してもらう。両社ともサービスを拡充することで、ユーザーに納得感を持ってパケット通信を使ってもらう方向への舵取りをしている。

 ここ最近の売れ筋端末ランキングでトップ10の大半を占めるようになったドコモは、これらの動きに対してどのように対応するのか。対抗策を採るのか、スルーするのか。2月に登場する「BlackBerry Bold」でスマートフォン関係を充実させ、「i コンシェル」などの新サービスの拡大を図る。もちろん、いち早くLTEを実現するインフラ作りは順調に進んでいる。こういった意味ではある程度他社に先んじた施策を打っている言えるのではないだろうか。僕の印象では、どうも他の2キャリアの動きはスルーする方向で考えているように見える。

筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET


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