スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

AVメーカー生まれのVivo(ビボ)が新興国で大ヒットを遂げるまで

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2017年09月24日 12時00分

 2007年には低価格携帯電話や、早くも音楽機能を強化した音楽携帯電話を発売。iPodのような円型コントローラーにスライド式キーボードを備える「i268」をリリースするなど、音楽機能で他社との差別化を図っていきます。

 その後、2009年にスマートフォンを手掛ける子会社としてVivoを設立。そのVivoの最初のスマートフォンは2011年に登場した「V1」でした。3.5型320×480ドットディスプレー、Snapdragon S1、500万画素カメラ、GSM/W-CDMA対応といった性能で、Vivoのフラッグシップという存在でデビューしたのです。

 UIはAndroid標準ではなくカスタマイズしたものを搭載。音楽性能も高め、音楽プレーヤーもジャケットを表示するなど、音楽機能を売りにした製品でした。なおこの時代はまだバックカバーに親会社のBBKのロゴが入っていました。

Vivo最初のスマホのV1。まだBBKロゴが背面に入っている

 このV1と合わせるように「E1」「S1」の下位モデルも投入。ディスプレーは3.2型、チップセットはMT6573とすることでV1より価格を下げ、普及機として売り出しました。

 また、E1には中国移動専用バージョンでTD-SCDMA対応の「E1t」も用意されました。一方、上位モデルには4型ディスプレーを搭載した「S1」を投入。4つのラインアップを早くも完成させます。

 このころはBBKブランドの携帯電話もまだ合わせて販売されており、携帯電話はBBK、スマートフォンはVivo、と両者は兄弟ブランドと言うイメージで製品を販売していました。

 ところで、2004年創業のOPPO(オッポ、欧珀電子)もBBKの子会社です。OPPOも音楽携帯電話を手掛けていましたが、BBKよりもスタイルを重視した製品を投入し、両者は全く別のブランドとして製品を展開していきました。

 2011年にOPPOが投入したスマートフォン「Find」も、横スライド式のQWERTYキーボードを備えたビジネス仕様にも耐えるハイエンド機でした。その後のOPPOはスタイリッシュなスマートフォンを出すなど、Vivoとは異なる戦略をします。

 さて、Vivoが世界的に注目を集めたのは2012年の11月。厚さ6.55mmの世界最薄スマートフォン「X1」を発表したのです。

 実はその年6月OPPOが発表した「Finder」が6.65mmと世界最薄製品でした。Finderの最薄の称号はわずか半年しか持たなかったのですが、中国メーカーが相次いで世界最薄製品を投入する動きにも世界は驚いたのです。

世界最薄スマホをいきなり投入、X1は厚さ6.55mm

 X1は薄いだけではなく、Cirrus Logic製のDACを搭載。また、高性能ヘッドフォンメーカーbeyerdynamicのステレオイヤホンを同梱する音楽スマートフォンでもありました。

 SoCはMT6755(1.2GHz、デュアルコア)、メモリー1GB、ストレージ16GB、4.7型540×960ドットディスプレー、背面800万画素+正面130万画素カメラと言う構成で、2499元でした。

音楽機能を続々強化しグローバル展開を果たす

 X1で技術力の高さを証明したVivoは、さらに音楽性能を高めた「Xplay」シリーズを2013年に発表。DACに加えHi-Fiアンプを追加しており、音楽専用プレーヤー端末の上を行く音楽再生能力を誇ります。ディスプレーも5.7型フルHD解像度(1080×1920ドット)と大型化し、Vivoのフラッグシップモデルとなりました。

音楽スマートフォンの地位を確立させたXplay

 このXplay初代モデルが話題になったのは中国国内程度でしたが、2013年12月にまたしても世界がVivoに目を向けることになります。

 Xplayの2機種目となる「Xplay 3S」が発表されましたが、なんと世界初のQHD解像度(1440×2560ドット)のディスプレーを搭載してきたのです。

 サイズは6型とさすがに大きかったものの、このころは大画面端末もブームになっており、それほど違和感を与えるものではありませんでした。当時はその高解像度を活かせるコンテンツはほとんど無かったものの、大手メーカーより先にあっさりとそのディスプレーを搭載してしまったのです。

 そのほかのスペックは、Snapdragon 801(2.3GHz、クアッドコア)、メモリー3GB、ストレージ32GBと基本スペックも強力。もちろん音楽性能は引き続き高く、音楽性能は絶対にスポイルしないのはさすが。本体サイズは158.2×82.6×8.7mm。やや横幅があるものの厚みは薄く、十分実用できる大きさでした。

 2014年に入るとX、Xplay以外のモデルはエントリー向けのYシリーズのみとなり、参入当時から複数の製品を出していたE、Sシリーズは統廃合されました。

 販売数を伸ばすためには低価格機の拡充が手っ取り早いものの、ブランド力は高まりません。Vivoとしては高いブランドと機能を備えたハイエンドモデルを中心にし、上位モデルに手の届かないユーザーにYシリーズを提供する、というポートフォリオ展開を目指していったのです。

世界初のQHDディスプレーを搭載したXplay 3s

 2014年5月には欲張りな製品を発表します。「Xshot」はショットの名の通り、カメラ機能を強化した製品でした。背面カメラは1300万画素F1.8と明るく、デュアルLEDを搭載。正面カメラは800万画素ですがこちらにもフラッシュが搭載されています。

 SoCはSnapdragon 801(2.5GHz、クアッドコア)、メモリー3GBとストレージ32GBはXplay 3Sとほぼ同等。ディスプレーは5.2型のフルHD解像度でした。

 もちろん、音楽機能は引き続きDACなどを搭載しています。音楽も強い、カメラも強いと2つの機能を大きくアピールすることで、「何でもできる」という漠然とした他社のハイエンドモデルよりも注目を集めることに成功もしました。価格は2999元から。そして、このXshotからVivoは海外展開を本格化させていきます。

 2014年は再び世界最薄のスマートフォン「X5 Max」の発表で1年を締めくくりました。X1のあとはTCLやOPPO、Gioneeに世界最薄の座を奪われていたのですが、X5 Maxは4.75mmとしてその座を奪い返すことに成功。3.5mmヘッドフォンジャックは本体の厚さほぼギリギリと言う状況で、スマートフォンの薄さ競争はここでほぼ終わりとなります。

 音楽性能を第一とし、カメラや薄さなどで付加価値を高めていく。このことによりVivoは高価格な製品の販売数を着々と伸ばしていくことに成功したのです。そして、新興国中心ながらもグローバル展開を始めたことで、Vivoのスマートフォン販売量は急激に伸びていきました。

mobileASCII.jp TOPページへ

mobile ASCII

Access Rankingアクセスランキング