松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析

アップルはジョニー・アイブ退職後どう関わるのか (2/4)

文●松村太郎 @taromatsumura

2019年07月09日 09時00分

●アイブの無茶振りはウェアラブルで生かされる

 ジョナサン・アイブ氏は、新しい自分のクリエイティブ事務所「LoveFrom」を通じて、ひきつづきアップルに関わるとしています。アイブ氏がなぜアップルに関わりたいのか、これまでの文脈から考えてみると、「地球上でアップルにしかできないこと」が存在し、自分のデザインを実現させてくれる唯一の会社だ、と考えているからではないでしょうか。

 そのターゲットとしてわかりやすいのが、ウェアラブルデバイスです。Apple Watchは、無闇に丸い文字盤を再現せず、ジョナサン・アイブ氏らしい、丸意味を帯びたシンプルな造形で、スマートウォッチならではのキャラクターを作り出すことに成功しました。

 バッテリー持続時間は18時間で、アップルはこれを「1日」と言い張り続けていますが、本当は1週間に1度程度の充電にしてほしいというのはユーザーとしての筆者の願いでもあります。だからと言ってスマートフォンのように時計を大きくすれば問題が解決するわけではありません。そこに引き続き、技術的なチャレンジが存在しているのです。

 ウェアラブルはそもそも、特にサイズというデザイン上の制約が強いカテゴリです。アイブ氏が考える「あるべき姿」は、テクノロジーの側面から見れば、相当厳しい要求ばかりが積み重なっていくことになるでしょう。地球上の企業で、その問題の解決に期待できるとしたら、アップルしかない。そのことをアイブ氏がもっともよく知っているはずです。

 新会社を通じてアップルとの関わりを続ける理由は、アイブ氏が考えたとおりにデザインを書き起こすことができる「自由さ」を確保するためではないでしょうか。

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