●真のデジタル転換のススメ
アップルはどちらかというと、対面でのコミュニケーションを重視する仕事のスタイルであり、だからこそ「Apple Park」のような本社のファシリティの充実がありました。しかし、だからと言って、オンラインで仕事が進まない、というわけではなかった、というわけです。
WWDCにしても、世界中から人を集めたお祭りの雰囲気も貴重なカルチャーと言えますが、これをフルオンラインにして、世界中の人に門戸を広げ、しかも同じ長さの基調講演をより楽しく、しかも密度が高いエンターテインメント的な情報提供の場へと変化させた点は、脱帽でした。
働き方や購買方法など、デジタル転換は新型コロナウイルスの感染拡大以前から、あらゆる業種で試され、また投資も進んできました。しかし日本を見ているとわかる通り、どこか本腰が入らないというか、今までのやり方に不都合がなく変化の方がコストだという意識もどこかにあったかもしれません。
新型コロナウイルスで人の移動が制限された中、いかにビジネスを維持するかという点において、デジタル転換はあらゆる業種にとって重要となり、カルチャーの変化も厭わない変化を実現できた企業やビジネスが生き残り、収益を減らすどころか高める結果となっています。
アップルの2020年第3四半期決算や、その間にあった新製品発表、世界開発者会議などのアクティビティは、非常に大きなケーススタディとなるのではないでしょうか。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
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