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ファーウェイCFOが帰国して英雄に スマホのマイナスは大だが、パブリッククラウドではすでに世界5位 (1/2)

文●末岡洋子 編集● ASCII

2021年09月29日 12時00分

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 ファーウェイの創業者の娘でCFOを務めるMeng Wanzhou(孟晩舟)氏が、9月24日に釈放された。米国との司法取引に応じたもので、翌日には中国・深圳に帰国して、一躍国の英雄となった様子。だからといって、ファーウェイ包囲網が弱まるとは思えず、引き続き5G関連では欧米や日本からの締め出しの状態は続くと予想される。

400億ドル規模とも言われるスマートフォン事業でのマイナスを埋めることはできないが、パブリッククラウドではすでにグローバルのトップ5に入っているという

カナダで自宅軟禁されていた創業者の娘が釈放

 孟氏はファーウェイの創業者Ren Zhengfei(任正非)氏の娘で、ファーウェイでは副会長兼CFOを務めている。その孟氏が飛行機の乗り継ぎ地だったカナダで逮捕されたのは2018年12月のこと。容疑は詐欺罪だ。内容はというと、米国が制裁の対象としているイランに対し、香港のSkycom Techを経由し、米国の技術が入った通信機器を納入。この件について、孟氏は金融機関に虚偽の説明をしたというもの。孟氏は2008年から1年間、Skycomの取締役も務めていた。

 孟氏を捕らえたカナダ政府に対し、米国は身柄の引き渡しを求めてきた。8月には引き渡しについての審理が行なわれ、10月中旬にも判決の期日を示すことになっていた。

 今回の釈放は、9月24日に孟氏が米ニューヨークの地方裁判所にオンラインで出廷し、起訴猶予合意制度(DPA)という司法取引に同意したことにより実現した。孟氏は通信詐欺、銀行詐欺などの容疑に対して無罪を主張したものの、司法省が起訴していた基本的な事実については認めたとのこと。

 これには「イランにおけるファーウェイの営業活動において、財務機関との関係を維持する目的で、財務機関の上級経営幹部に複数の虚偽の陳述をしたこと」などが含まれるようだ。米国は2022年まで起訴を猶予(その後、一定条件のもとで不起訴となる)、カナダ政府への身柄の引き渡し要請も取り下げた。

 孟氏が中国に戻ると同時に、中国政府は(孟氏が逮捕された直後に)スパイ容疑で拘束していたカナダ人2人を解放した。

2021年はスマホ事業が400億ドル減少か?

 ファーウェイが米中貿易戦争の中心となったことを決定づけた事件が大きな展開を迎えた。チャーター機で深圳空港に到着した孟氏が赤いワンピース姿でタラップを降りる姿や家族と再会する場面は、祖国に戻ったというハッシュタグでWeiboなどの中国のSNSで話題となったようだ。

 一方で、この3年近くでファーウェイのビジネスは打撃を受けた。特に大きいのは、コンシューマー事業、つまりスマートフォンだ。世界的な半導体不足でPC、自動車などさまざまな影響が出ている中、ファーウェイは米国の制裁により供給経路を絶たれた格好で、パーツの在庫が尽きるまでという状況だ。

 一時はスマートフォン市場で世界トップの悲願を達成したものの、現在は上位5位からも脱落している。

 ファーウェイの輪番会長Eric Xu氏は9月24日、法人向け事業の年次イベント「HUAWEI CONNECT 2021」での記者会見で、2021年にスマートフォン事業は300億~400億ドル減少するとの見通しを示している。ロイターによると新事業はスマートフォンの減収を補えないと語っているという。

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