モジュール単位でアップグレードできる端末は
過去にはあったが大きな人気にはならなかった
もう1つは環境への意識だろう。SDGs、ESGなど社会の環境への意識は高まっており、ダイバーシティとともに企業の重要な経営課題だ。
アップルの「Environmental Progress Report」によると、同社のカーボンフットプリント(CO2換算2260万トン)のうち、71%が製品の製造過程から排出されている。また、Compare and Recycleによると、iPhone 12の場合、実際の使用中に排出されるCO2はわずか13%。大半のCO2は製造時に排出されるわけで、製品を長く使うほど持続性に優れた使い方と言える(https://www.compareandrecycle.co.uk/blog/iphone-lifecycle-what-is-the-carbon-footprint-of-an-iphone)。
一般的に頻繁に買い替えた方が色々な意味でメリットが大きいのがモバイル業界だ。スマホの部品を取り替えることで長く使えるようにしようというアイデアは以前にもあり、LGなども取り組んでいた。欧州にはFiarphoneというモジュールスマホ専業メーカーもある。Fairphoneはモジュール交換だけでなく、サプライチェーンでもフェアを目指しており、フェアトレード団体のFairtradeでゴールド認定をもらっている。
アップルのSelf Service Repairが広く使われるためには、そもそも設計段階から簡単に修理できるような構造にする必要がある(回路をショートさせることでバッテリーが発火するなどのリスクは常にある)。また、部品やツールの価格が高くてもうまくいかないだろう。おそらくほとんどのiPhoneユーザーは画面が壊れたから、あるいはバッテリーの持ちが悪くなったからといってこのプログラムを利用しようとは思わないのではないかと予想するが、どうなるだろうか。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている