今日のテーマは、ソフトバンクモバイルが2008年夏モデルとともに発表した新しいサービス「着デコ」である。
NTTドコモがすでに行なっている「着もじ」というサービスをさらに発展させたものだ。着デコを利用して電話をかけると、相手が電話を取る前にケータイ画面にアニメーションや短いメッセージを表示したり、特定の着信音を鳴らせる。
着もじや着デコは、ずいぶんとニッチなサービスにも見えるが、電話の進化を追ってみると、ユーザーの必要に応じて出てきたものだということが分かる。それは、コミュニケーションのきっかけを作るコミュニケーションだ。
「電話が来たら出る」のが、固定電話の常識だった
ケータイと一般的な固定電話との違いはいくつも挙げられる。
1人1台もしくは1人2台を持ち歩いているケータイは、電波が通じる限りいつでもどこでも着信に応えられる。その進化の過程で、メールやウェブなどの文字や画像を扱えるようになり、最近ではテレビまで見られるようになった。そして夜は、枕元で一緒に寝て(充電して)、翌朝、目覚ましとして起きる瞬間から活躍してくれる。
ケータイが発展した現在でこそ、これだけたくさんの「固定電話にできないこと」が存在しているが、ケータイがまだ通話しかできなかった頃から、固定電話との違い、つまり「パーソナルな通信手段である」特徴が現れていた。その一例が、「番通選択」である。
「ケータイ学入門」という書籍では、「番通選択」について、ケータイの基本機能である番号通知と、パーソナルな電話であるケータイの性質から、電話の受け手は「番号通知」を見て、電話に出る/出ないを判断していると述べている。
固定電話しかなかった時代、あるいは現在もそうかもしれないが、多くの人に取ってこの電話に出ることを選択するというのは、あり得なかったことだろう。「電話がかかってきたら、すぐに出なければならない」という暗黙の了解があった。
僕が子供の頃、一人で留守番をするときにも、「電話がかかってきたら出なさい、名前と用件と電話番号を聞きなさい」としつけられたものだった(その後、留守録機能やナンバーディスプレーが出てきたことで、その常識を変えた人もいるだろう)。
しかしケータイでは話が違う。番号付きで電話がかかってきた際、相手や自分のタイミング、そのときのシチュエーションに応じて、電話に出る、出ないを瞬時に選択しているのだ。