山根博士の海外モバイル通信

自分で修理やアップグレードできるスマホ「Fairphone 3+」に興味あり

文●山根康宏 編集●ASCII

2020年09月04日 10時00分

フェアトレードの取り組みから生まれたスマホ「Fairphone」

 オランダのFiarphoneからパーツを自分で交換できるスマートフォン「Fairphone 3+」が発表されました。5.65型アスペクト比18:9のディスプレーを搭載し、チップセットはSnapdargon 632。メモリー4GBにストレージ64GB、バッテリーは3040mAhを搭載します。カメラは4800万画素でフロントカメラは1600万画素。価格は469ユーロ(約5万9000円)です。

4800万画素カメラ搭載のFairphone 3+は保守パーツを購入できる

 Fairphoneの「Fair」は「フェアトレード」を意味します。使用するパーツは紛争地帯で産出される金属などを採用しない、故障しても自分でパーツを交換できる、さらに製造工場の従業員の勤務環境を豊かなものにするなど、製品ができあがるまでにフェアな環境で作られた製品を意味します。この辺りはこちらの記事に詳細が出ています(フェアトレードに興味は無くても、部品取り替え可能が魅力のスマホ「Fairphone 3」)。

 上の記事にあるように、Fairphone 3+の前モデルである「Fairphone 3」は2019年夏にローンチされました。基本スペックはFairphone 3と同等で、カメラが1200万画素(フロントは800万画素)という違いがあります。価格は419ユーロ(約5万3000円)でした。

カメラスペックが低い「Fairphone 3」

 ヨーロッパは世界の他の地域以上にフェアやエコに関心のある国です。スマートフォンを落としてしまい壊れたからと言って、それを売り払って新しい機種に買い替えるよりも、なるべく修理して使い続けようという人が多くいます。筆者は今年2月にヨーロッパへ行きましたが、今でもiPhone 4やノキアのWindows Phoneを使っている人をよく見かけたほどです。

 Fairphoneもフェアトレードに関心があるユーザーを狙って製品を開発しています。とはいえFairphone 3のスペックと価格のバランスは、今の時代では割高です。たとえばOPPOのA5(2020)は6.5型ディスプレーにSnapdragon 665、1200万画素を含むクワッドカメラ搭載で169ユーロ(約2万1000円)、A9(2020)はカメラが4800万画素を含むクワッド仕様で229ユーロ(約2万9000円)です。

Fairphone 3よりも高スペック・低価格なOPPO「A5(2020)」

 これまでFairponeは初代モデル、2世代目モデルが出てきましたが、いずれもスペックは単一で、後からカメラなどをアップグレードできました。しかしFairphone 3が出てきた現代では、スマートフォンのスペックアップが加速度的に進んでいます。Fairphone 3を買って後からカメラを交換するのではなく、最初からカメラ性能のいい製品を販売しなければ価格競争力がなく消費者の関心を向けさせるのが厳しいと思われます。Fairphone 3の性能をユーザーがアップグレードするのではなく、メーカー側があらかじめカメラ機能をアップグレードさせたFairphone 3+を投入したのは、そんな理由ではないでしょうか。

 なお修理・アップグレードパーツはFiarphone 3の発売後から提供されています。バックカバーやバッテリー、スピーカーなど各種モジュールはFairphone 3/Fairphone 3+共通で使えます。バッテリーは交換式ではないのでネジを使って交換が必要で、モジュールパーツと同じ扱いです。カメラは4800万画素モジュールが59.9ユーロ(約7500円)。Faiphone 3を買った人や、Fairphone 3+を使っていてカメラが壊れた人でも自分で直すことができます。

Fairpone 3は分解できる。それぞれのパーツ(モジュール)も購入可能

 筆者もFairphoneには大きな関心を寄せています。筆者は20年近くノートPCはThinkPadシリーズを使い続けてきました。空冷ファンやキーボードの故障、バッテリーが劣化しても、ThinkPadなら自分でパーツを買ってきて交換できため、メンテナンス性の良さから使い続けてきたのです。2018年にRazerのノートPCに買い替え、最初に故障が発生したときは「修理ってどうすればいいんだろう?」と慌ててしまったほどです。壊れたらメーカーのサービスセンターに出すという、初歩的なことが思い浮かばなかったほどです。

 現在メインで使っているスマートフォン「Galaxy Note10+」もディスプレーの角が割れ、さらにUSB端子が破損して使えなくなってしまいました。そのため充電はワイヤレスで行っています。修理に出そうにもロンドンで買ったものですから難しいですし、できれば自分の空いているタイミングで修理したいもの。Fairphoneのようにある程度のパーツが提供され自分で修理できたらどれだけ便利かな、と思うわけです。

 とはいえFairphone 3 / Fairphone 3+の価格はフェアユースに賛同できても割高に思えてしまいます。なにせスマートフォンの低価格化は急激に進んでおり、いまや5Gスマートフォンですらシャオミの「Mi 10 Lite 5G」がヨーロッパでは379ユーロ(約4万8000円)で変えてしまいます。

 それでももしヨーロッパへ行けるようになったら、Fairphone 3/Fairphone 3+の実機に触れてみて、質感が悪くなければ購入したいと思っています。Fairphone 3のほうはバックパネルが透明なのも物欲をそそります。Fairphone 3が買える日がくるのを今から楽しみに待ちたいと思います。

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