松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析

アップルらしからぬiPhoneマスク対策 Apple Watchが必要とは (4/4)

文●松村太郎 編集● ASCII

2021年02月16日 09時00分

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●iPhoneへの指紋認証復活は消えたか?

 前述の「各製品での体験の完結」の観点を確保するためのiPhoneの対応は何になるでしょうか?

 マスクが前提の社会において、顔認証が難しい環境が継続する中で、iPhoneが生体認証を活用できる現実的な方法として、既存のアセットではTouch IDをFace ID端末に復活させることです。

 実際、ホームボタンを廃止しながらFace IDを持たせなかったiPad Airには、電源ボタン(トップボタン)に細長いTouch IDを内蔵することで生体認証機能を盛りこんでおり、iPhoneのサイドボタンにTouch IDを内蔵することは、アップルが持っている技術としては可能であると言えます。

 しかしここには、生体認証の手段が複数存在することによるセキュリティへの懸念があります。たとえば、Face IDが認証されなくても、Touch IDの認証で端末のロックを解除できて良いのか? どちらの生体認証を優位ととらえるのか? などの問題が出るからです。

 そもそもTouch IDよりも誤認率を低下できるとしてFace IDを搭載した経緯から考えると、Touch IDの「セキュリティを緩める」扱いをすることになり、それをアップルあるいは顧客が許容するか、という問題があります。

 そうした事情を考えると、もしApple WatchによるiPhoneのロック解除がユーザー体験として好評であるなら、iPhoneにTouch IDを復活させる可能性は非常に下がっていくのではないかと考えています。

 

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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