石川温のPCスマホニュース解説

ライカがスマホを作った理由 (5/5)

文●石川温

2021年10月25日 09時00分

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光学系とAIの組み合わせが今後の競争軸に

 スマートフォンの世界では、アップルに代表されるように「コンピュテーショナルフォトグラフィー」という取り組みが一般的になりつつある。カメラセンサー自体は小さいが、AIなど機械学習の力で画質を上げるというものだ。暗い場所が明るくなり、風景なども鮮明な色合いになることでSNS映えするだけに、ユーザーの支持も高い。

 老舗のカメラメーカーとして地位を築いてきたライカだが、AIで画質を上げるコンピュテーショナルフォトグラフィーを、どのように考えているのか。

 ヴァイラー博士は「コンピュテーショナルフォトグラフィーはスマートフォンの小さいセンサーで画質を上げることができる。我々もそうした知見は充分、持っている。ノイズを減らしたり、ダイナミックレンジを広げたりするなど、様々なテクニックで処理できる。

 コンピュテーショナルフォトグラフィーで美しく見せることは可能だが、ただ、やはりどうしても過剰な処理になりがちで、やり過ぎ感が出てしまう。

 便利なものであることは間違いないが、やり過ぎると自然な発色、描写ではなくなってしまう。そうした特性を知った上で使うべきだろう」と語る。

 コンピュテーショナルフォトグラフィーは、アップルやグーグルが強かったりするが、一方で、この2社もセンサーや手ぶれ補正など光学的なアプローチで画質を上げる努力も惜しんでいない。

 ライカはカメラメーカーだからこそ、光学的なノウハウで画質を上げるアドバンテージに強みがある。

 まさにスマートフォンのカメラは、AIやチップセットで処理する画質と、レンズやセンサーで勝負する画質、この2つをいかに融合させていくかが、これからの競争軸になっていきそうだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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