佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド

iPodがついに終焉、ウォークマンとの対比でそのインパクトを思い出す (2/2)

文●佐々木喜洋 編集●ASCII

2022年05月16日 13時00分

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ハイレゾ化は果たさず、高音質プレーヤーのトレンドには加わらなかった

 一方でiPodはハイレゾの波に乗れなかった。

 iPodで開かれたファイル再生のトレンドは、PCオーディオの進歩に影響を与えながら、音質の進歩を続けた。2000年代の中盤にはスタジオマスター品質などという触れ込みで、ハイレゾ音源の販売が始まった。当時のアップルのCEOでオーディオ好きでもあったジョブズは、ニール・ヤングとともにスタジオマスター品質のオーディオについて語り合っていたという。

 もしジェフ・ラスキンが開発を続けていたならば、Macintoshのなりえたもう一つの可能性が「CANON Cat」であったのと同様に、ジョブズが存命だったならばiPodのなりえたもう一つの可能性は「PonoPlayer」であったと言えるかもしれない。しかしジョブズの死によってそれは消えた。後に「iPod Classic」と呼ばれたスクロールホイール付きのiPodは2014年に販売終了。その後も販売が続いていた「iPod touch」はSIMが入らず"イヤホン端子のあるiPhone"というべき存在だった。

 対するソニーはハイレゾ対応のウォークマンを開発。ハイエンドデジタルプレーヤーのトレンドと歩調を合わせ、時には先導しながら次々と新しいモデルを発表してきた。Android搭載のウォークマンにも力を入れており、現在もハイレゾ対応デジタルプレーヤーの頂点の一角にいる。

 そして時代はストレージ内に保存したファイルの再生ではなく、インターネットからストリーミング再生する時代となった。アップルはハイレゾ対応できなかったiPodを忘れたかのようにハイレゾストリーミングを積極的に展開している。今後アップルが新たにデジタルプレーヤーを開発する可能性は低いだろうが、オーディオへの情熱は消えて欲しくはないと思う。

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