末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢

登場から7年、Apple Watchはクック氏の戦略通りに健康に関心を持つ新しいユーザー層を獲得した (1/2)

文●末岡洋子 編集● ASCII

2022年09月15日 12時00分

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 9月といえば新型iPhone。既報のとおりに、アップルは7日(現地時間)にiPhone 14シリーズを発表したが、個人的に気になっていたのは「Apple Watch」だった。すでに8世代目、主役ではないにせよ、影の主役と言ってもいい存在になっているように見える。

アップルファン、iPhoneユーザーがApple Watchを購入するだけでなく、Apple Watchからアップル製品に入るユーザーも生まれつつある印象だ

Apple Watchは確実に新しい層のユーザーを獲得している

 今回登場したApple Watch Series 8は心電図アプリケーション、転倒検出、衝突事故検出などの機能に加え、皮膚温測定機能、過去の排卵日を推定する周期記録など女性向けの機能が目を引いた。女性向けのアプリはいろいろあれど、基本的には自分で体温を測定して、数値を入力しなければならない。センサー技術の発達によって、自動で測定して、自動で記録されるとなると、利便性は大きくアップする(欲を言えば、やはりバッテリー駆動時間をもう少し改善してほしい)。

 今回の機能に限ったことではないが、Apple Watchが自分の体や健康についてのデータを簡単に知れるようにしてくれているというのは、iPhoneだけでは得られない価値だ。スマートフォンが当たり前になった今となっては、Apple Watchの方が利便性やワクワクを感じる人がいても不思議ではない。

 このようにApple Watchができることは増えており、これが普及につながっていると感じる。筆者が通っているヨガ教室では、コロナ前と比較して目に見えてスマートウォッチをつけている人が増えた。多くはApple Watchだ。一見すると、ガジェットにはあまり興味や縁がないと思われる層の人もいる。

 iPhoneと比べるとApple Watchはまだまだ発展途上なので、新製品の新しさもわかりやすい。健康に関心があり自分のデータをチェックする人たちは、iPhoneよりもApple Watchの買い替えサイクルの方が早いように感じることすらある。

クック氏肝入りのApple Watchは登場から早くも7年

 Apple Watchの登場は2015年。過去の例と同じく、アップルはこの分野のパイオニアでは決してなく、当時すでにサムスンやPebbleなどが同種の製品をリリースしていた。ウェラブルバンドのFitbitにしても2007年、iPhoneが登場した年に創業されたのだ(2019年にグーグルが買収)。

 Apple Watchはアップルにとって重要な使命を負っていたと思う。1つは、スティーブ・ジョブス氏に代わってCEOに就任したティム・クック氏の下で初めて加わる製品カテゴリであること。クック氏は2011年にCEOに就任。それまではiPhone、Mac、iPadなど基本的にジョブス氏が敷いた製品ポートフォリオを継続するに過ぎなかった。その後、クック氏はヘルスケアを重要分野に位置づけ、Apple Watchで新しい分野、新しい層を開拓を図った。そしてその戦略は成功している。

 当初リストバンド型が主流で、スマートウォッチは機能に対して価格に見合わない、ニーズを感じないという向きが多かったと思う。決済ができるとか、SNSの通知を受け取ることができるとか、なんなら通話もできるとかよりも、やはり健康関連の機能が普及の最大の要因に見える。

 スマートウォッチ市場全体の立ち上がりは時間を要したものの(これも大筋の予想通りだが)、フィットネスバンドからスマートウォッチへの流れが明らかになってきた。

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