家電メーカーとして知られるTCL。海外ではスマートフォンも展開しており、自社開発のディスプレー技術「NXTPAPER」を搭載した製品が大きな特徴です。IFA2026では、有機ELとNXTPAPERを初めて組み合わせたスマートフォン「TCL P80 Ultra」「TCL P80 Pro」を発表しました。テレビでは、「SQD-Mini LED」を採用した最新モデルも紹介していました。
NXTPAPERが有機ELに進化
NXTPAPERは、紙のような見やすさを目指し、画面の反射やブルーライトを抑えるTCL独自のディスプレー技術です。長時間使っても目に負担がかかりにくいよう配慮されており、子どもが使う端末にも向いています。従来は液晶をベースにしていましたが、今回の新製品では有機ELを採用しています。この技術は、今年3月にバルセロナで開催されたMWC2026でも展示されていました。見やすさを追求しながら、有機ELならではの引き締まった黒を表現でき、暗い画面を表示するときの消費電力も抑えられるようになりました。
TCL P80 UltraとTCL P80 Proの主なスペックは共通で、チップセットはMediaTekのDimensity 7400 Elite、ディスプレーは6.83型(2772×1280ドット)のNXTPAPER AMOLEDです。バッテリーは5800mAhで、45Wの急速充電に対応しています。カメラは5000万画素の広角と800万画素の超広角で、Ultraのみ光学3倍の5000万画素ペリスコープ望遠カメラを搭載しています。本体サイズはどちらも77.69×163.34×8.26mmです。
キーひとつで電子ペーパー風の表示に
従来のNXTPAPER搭載モデルと同様に、TCL P80 UltraとTCL P80 Proには、通常のカラー表示のほかに、電子ペーパー風の画面表示を行なうモードも搭載されています。本体側面の「NXTPAPERキー」で、ワンタッチで切り替えられます。
「Paperモード」は、紙のような落ち着いた色合いのカラー表示で、カラー電子ペーパーのような見た目になります。「Max Inkモード」はモノクロ表示で、白黒の電子ペーパー風です。電子コミックや書籍など、読むコンテンツに合わせて切り替えれば、紙の本に近い感覚で読書を楽しめます。さらにMax Inkモードでは通知やバックグラウンドの動作も制限されるため、読書に集中しやすく、バッテリーの消費も抑えられます。
NXTPAPERを搭載したタブレットも発表されました。11型の「TCL TAB A1 NXTPAPER」と12.2型の「TCL TAB A1 Plus NXTPAPER」の2機種で、こちらは従来と同じ液晶ベースのNXTPAPERディスプレーを搭載しています。「T-Pen 2」によるペン入力にも対応し、読書や学習、手書きメモなどの用途を想定しています。このうちTCL TAB A1 NXTPAPERは、日本でも9月11日に発売されました。
主力のテレビはSQD-Mini LEDを拡充
TCLの主力製品といえば、やはりテレビでしょう。IFA2026では、2026年モデルとして販売中のSQD-Mini LEDテレビをベースにした最新モデルとして、「X11L」「C8L」「C7L」の各シリーズを展示。最上位モデルから、より幅広いユーザー向けのモデルへとラインアップを広げています。
SQDは「Super Quantum Dot」の略です。SQD-Mini LEDは、量子ドット、カラーフィルター、バックライトを改良し、色の鮮やかさと明暗の描き分けを高めた液晶テレビの技術です。青色Mini LEDの光から量子ドットで赤と緑の光を作り、液晶層で通過する光の量を調整。さらにカラーフィルターを通すことで、映像の色を表現します。量子ドットとカラーフィルターの両方で不要な色の混ざりを抑え、幅広い色を描き出します。
また、バックライトを細かいエリアに分けて明るさを調整するだけでなく、レンズで光の広がりも制御しています。暗い背景に明るい物体を映したとき、その周囲に生じる光のにじみを抑える設計です。
ほかにも、TCLのディスプレー開発子会社であるCSOTの最新技術が展示されていました。なかでも気になったのは、TCLが世界初とうたう28型の3つ折りポータブルディスプレーです。インクジェット印刷による有機ELを採用し、解像度は3840×1280ドット。開くと横長の大画面になり、3つ折りにすると16型相当の持ち運びやすいサイズになります。展開時の厚さは4.48mmで、背面のスタンドを使って縦向きにも横向きにも設置できます。
CSOTのスマート工場を見学
ところで筆者は、2026年7月に中国・広東省にあるTCLの本社と工場を訪問しました。その際にCSOTのスマート工場を見学したので、その印象も紹介しましょう。100万平方メートルの敷地を擁するこの工場には、大型パネルの生産ラインが設置され、ガラス素材を供給するAGCの工場も隣接しています。さらに、動力ステーションや廃棄物処理施設、太陽光発電システムなどのインフラも完備されています。
テレビ向けパネルの製造では、大型ガラス基板に対応した高度な生産体制が確立されています。2011年の本格生産開始以来、技術革新を重ね、現在は最新設備を備えたT6・T7ラインを中心に大型パネルを量産しています。隣接するガラス工場からの直接供給体制や、中国国内に展開する12本の生産ラインを生かし、大型・高精細パネルを効率よく製造しています。
日本市場では「体験」と「サポート」を重視
TCLは現在、日本ではテレビを中心に、冷蔵庫や洗濯機などの生活家電、そしてタブレット製品を展開しています。本社を訪問した際に、日本市場での取り組みについても同社の幹部に話を聞きました。TCL実業のAPBGマーケティング本部総経理を務める張国栄氏と、同社のスマートスクリーン関連事業部副総経理兼グローバルプロダクトオペレーションセンター総経理の左波氏によると、主力のテレビでは、購入前に製品を確かめられる機会と、購入後のサポートの両方を重視しているといいます。量販店では大画面モデルを展示して実際に体験してもらうことを重視し、2026年モデルのMini LEDテレビには3年保証を導入。長く使ううえでの不安を減らす取り組みも進めています。
今後は、テレビの画質や音質に詳しい専門家との連携にも力を入れ、日本の住環境や暮らしを踏まえて製品の魅力を伝えていく考えです。技術やスペックを紹介するだけでなく、実際にテレビを見る場面でどんな良さを感じられるのかまで伝えることで、TCLを選ぶ理由を増やそうとしています。
ソニーとの合弁でテレビ事業はどう変わる?
TCLといえば、ソニーとの提携も注目されています。両社は2026年1月に基本合意を発表し、3月には具体的な契約を結びました。計画では、ソニーのテレビやホームオーディオなどの事業を新会社に移し、TCLが51%、ソニーが49%を出資します。新会社は開発から製造、販売、購入後のサポートまでを手がけ、製品には引き続き「ソニー」や「ブラビア」の名称を使います。関係当局の承認などを経て、事業開始は2027年4月を予定しています。
ソニーが蓄積してきた映像・音響の技術に、TCLのディスプレー技術や調達・生産体制がどう組み合わされるのか。両社の強みが今後の製品にどう反映されるのか、気になるところです。







































