松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析

アップル攻めの出店 日本で役割大きく (3/4)

文●松村太郎 @taromatsumura

2019年08月28日 09時00分

●困ったときのApple Store

 Apple Storeは、アップル製品に触れることができる場として、スティーブ・ジョブズ氏が指揮して構築した直営店網でした。日本では東京・銀座に2003年にオープンしており、米国外初の店舗だったこともあり、ジョブズ氏が開店に合わせて来日したことでも知られます。

 アップル製品を最良の形で陳列し、最高の購買体験を提供し、アップル製品のための修理などのサポートや、使い方を知ることができる学びの場として設計されました。

 日本は家電量販店が全国に出店しており、デジタル製品から家電まで、魅力的な商品の陳列につい足を運んでしまう場所です。ところが米国のBestBuyなどの家電チェーンは自らも含めて主戦場をオンラインへと移しており、陳列棚には空欄も目立ち、新たな出会いの可能性を感じることはできませんでした。

 Apple Storeには、Amazonのような商品点数や、Kickstarterのようなワクワク感があるわけではありませんが、確実にiPhoneやiPad、Macと組み合わせることができるアクセサリーを一部独占で販売していることを考えると、訪れる価値がある小売店という評価をすることができます。

 まったく新しいカテゴリの商品に触れてもらい、知ってもらう、というApple Storeの役割から、やや変化しはじめているのも事実です。

 アップルは2019年第3四半期決算(4〜6月)、iPhoneの販売を12%減少させている一方で、アップル直営店での下取り強化策から、米国における販売が戻ってきているとのコメントも電話会議で聞かれました。

 アップルは再資源化を進めるため、Apple Storeでの下取りを推奨していますが、その買取金額の増加や、買い替えを促進するようなマーケティング施策を行えるチャネルとしての役割も担うようになっています。

 もちろん既存ユーザーがより活用を深めることで引き続きアップルのユーザーベースを支える顧客であり続けてもらうための取り組み、すなわちToday at Appleのセッションの充実などもしていますが、よりダイレクトに販売施策を打てる点は、直営店を持つ強みと言えるのではないでしょうか。

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