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英国とEUでファーウェイ包囲網崩れる (1/2)

文●末岡洋子 編集● ASCII

2020年02月12日 09時00分

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 英国と言えば、日本のメディアでは1月31日にEUから離脱したブレグジットの話題が目立つが、通信業界ではその3日前に重要なニュースがあった。米国が持ちかけているファーウェイ排除問題に対し、半分の”ノー”の見解を出したのだ。その翌日には、欧州連合(EU)も5Gネットワークに対して見解を示した。

コアでは禁止、基地局はOK、ただし比率は35%以下

 1月28日、英政府は5Gネットワークにおけるファーウェイ製機器の使用を許可するかどうかの問題に対し、1年越しの決断を示した。英政府の発表は、「リスクの高いベンダーは、5Gとギガビット対応ネットワークにおいて機密性の高い”コア”部分から除外する」というものだが、逆に言えばそれ以外の部分ではリスクの高いベンダー(=ファーウェイ)の機器も使用できるということになる。

 ファーウェイが提供できないのは、ネットワークコアに加え、ライフラインなど重要インフラにおける国家保安や安全のためのネットワーク、原子力発電所や軍の基地などの重要な場所となる。

 一方で機器を提供できる「ネットワークにおける機密ではない部分」は、主として基地局などになる。ここでも、リスクの高いベンダーの機器の比率は35%以下という制限が設けられた。

 トランプ大統領はもちろん、ポンペオ国務長官も、ファーウェイ製機器は盗聴の危険があるとして、ファーウェイを重要な情報システムで採用している国とは情報共有はできないと脅していた。このような警告に対し、イギリスのドミニク・ラーブ外務大臣は、この決定は、米国や「Five Eyes」と呼ばれる英語圏5ヵ国との情報共有に影響を与えるものではないと語っている。

 決定の場となった国家安全保障会議は、国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)に対し、ファーウェイ機器を使用している国内の通信オペレーターにセキュリティー上のガイダンスを提供することを求めている。

現実問題として5G世代でファーウェイを採用しないのは難しい

 英国がファーウェイ問題にどのような決断をするか――英国の市場規模、ボーダフォンなど通信大手の存在、そして英国と米国、ブレグジット、さらには中国市場という多様な関係もあって注目されていた。ファーウェイにとっても、英国は特に注力市場となっており、早期段階からサイバーセキュリティセンター(HCSEC)を設けている(顧客を含む主要企業から引き抜きもしている)。

 ファーウェイのグローバル政府担当プレジデントのVictor Zhang氏は、「ファーウェイは順調な5Gのロールアウトに向けて、継続して顧客と作業できることになり、安心した」「証拠に基づいた意思決定が行なわれたことで、より高度で安全で、コスト効率の良いテレコムインフラを手に入れられる。英国は世界をリードする技術にアクセスでき、競合優位性を維持できる」とコメントした。

 一方で、数人の米国政府関係者が失望したというツイートをしている。

 英国のこの決断は事前に予想されていた。背景の1つとして、選択肢が限定的であることが挙げられる。

 グローバルで展開しており(何かあったときにサポートもできる)、5G技術を持つ通信機器ベンダーは、ファーウェイのほか、エリクソンとノキア、サムスンぐらいしかない。また、5Gネットワークを1社で構築するという選択肢は無い。それを考えると、50%近くという最大のシェアを持つファーウェイの除外の影響は大きくなる。

 なお英国でもすでに5Gサービスは始まっており、ボーダフォン、EEなどが一部ファーウェイの技術を採用しているが、今回35%という制限が設けられたことにより調整を強いられる。

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