シャオミのEV(電気自動車)は、今やスマートフォンと並ぶ同社の「顔」となる存在だ。2024年3月に「SU7」で市場に参入し、その後は「SU7 Ultra」「YU7」と相次いで新車を投入。2026年9月には、新シリーズの「SkyNomad(澎程)」も発売した。現在はまだ中国だけでの販売だが、2027年には海外への投入も予定されている。
参入から2年あまりで次々と製品を展開するシャオミのEVはどこで作られているのか。中国・北京にあるシャオミのEV工場を訪れた。
最新EVをショールームでチェック
シャオミの自動車スーパーファクトリー(Xiaomi Auto Super Factory)は、北京市郊外の北京経済技術開発区(亦荘)にあり、敷地面積は71.8万平方メートルと、国立競技場の約6.5倍の広さを誇る。シャオミがEV参入を発表したのは2021年3月で、2022年4月に工場の建設を始め、2023年6月には第1期が完成。参入発表からわずか2年あまりで巨大な施設を作り上げたのだ。
ここにはショールームやEV購入者への引き渡し(納車)コーナーもある。現地を訪問してみると、シャオミのEVにかける本気度を強く感じられた。
ショールームエリアでは、入り口正面の天井から吊り下げられたSU7が来場者を出迎えてくれる。シャオミのEVの原点となる車種であり、その存在感の大きさをだれもが実感するだろう。その下はちょっとした商談・休憩スペースになっており、スターバックスも入っている。すぐ横のショールームで実車を見たあとに、このエリアで軽く飲食しながら購入の相談をすることも可能だ。
今回ショールームを訪れたのは平日の午後だったが、海外からの視察客から地元の一般客まで、多くの訪問者でにぎわっていた。SU7、YU7、そしてSkyNomadの最新モデルが展示されており、それぞれをじっくりと体験することができる。シャオミのEVはスマートフォンとの連携を標準で備えるスマートカーであり、スマートフォン、車内の大型ディスプレイ、さらには音声でさまざまな操作ができる。細かな操作方法もスタッフが丁寧に説明してくれた。
展示されていたEVの中でも一番注目を集めていたのは、最新モデルのSkyNomadだ。SkyNomadは、ガソリンエンジンを発電専用に使うレンジエクステンダー式のSUVである。5人乗りの「N70」と、全長5.28mの大型SUV「N90」の2シリーズで、「N70 Pro」「N70 Max」「N90 Max」「N90 Max Studio」の4モデルを用意。それぞれ車体サイズや座席数、駆動方式、バッテリー容量が異なっている。価格は20万9900元(約474万円)から。シャオミのスマートフォンと同様に、EVも性能を考えるとコスパは高い。
SkyNomadのコンセプトは「移動空間の再定義」。それを体感できるのが座席レイアウトの変更だ。前席を180度回転させて後列シートと向かい合わせにすれば、車内がリビングルームや会議室のような空間に変わる。しかもこの変更は、車載ディスプレイやドア横のボタンのほか、「座席を向かい合わせにして」と音声で指示するだけで自動的に行なわれる。なお、安全のため、座席の回転機能は駐車中のみ利用でき、走行時は前向きに戻す必要がある。
また後部座席をフラットにすれば、大人でも寝られるベッドルームのような空間が現れる。2列目シートはワンタッチ、約30秒で長さ1.87mのベッドに変わる。SkyNomadは自動車を、目的地までの単なる移動手段ではなく、家を出たあとも24時間過ごせる空間に変えてしまうのだ。
最上位モデルの「N90 Max Studio」は、電動の昇降ルーフを備える。ルーフを持ち上げると2層のロフトのような空間になり、身長1.8mの大人でも立てるほどの高さを確保する。上段のスペースは、メッシュの窓から星空を眺めたり、寝台として使ったりすることもできる。SkyNomadはキャンプや車中泊にも使える「動くスタジオ」にもなるのだ。
EVを支える技術や素材
シャオミのEVには、すべてHyperOSが搭載されている。車内のインフォテインメントだけでなく、窓の開閉やドアロック、エアコン、シート調整といった車の基本的な操作も、運転席横の大型ディスプレイから操作できる。また、スマートフォンとの連携もシームレスで、同じHyperOSを搭載するシャオミのスマートフォンからの操作にも対応する。スマートフォンにかかってきた電話をEVの車内で受けられるほか、車内カメラの映像をビデオ通話で利用することもできる。さらに車内から家電を操作することも可能だ。HyperOSによる「Human x Car x Home」エコシステムを、ここではしっかりと体験できる。
EVを動かす車載コンピューターも、シャオミが力を入れる技術のひとつだ。「四合一域制御モジュール」は、車載の4つの頭脳を1つに統合した中央コンピューターである。高集積化によって小型・軽量化を図り、エネルギー効率の改善で航続距離を最大16km延ばすという。コックピット向けには4nmプロセスのクアルコム「Snapdragon 8 Gen 3」を採用。運転支援向けには「NVIDIA DRIVE AGX Thor」を搭載し、700TOPSの演算性能を備える。これらは車内体験と運転支援を支える中核だ。
ショールームではEVの技術展示も行なわれている。ゼロからEV市場に参入しただけに、シャオミは独自の車体プラットフォームの開発に力を入れている。SkyNomadが採用する「Xiaomi Kunlun Platform」は、SU7やYU7の「Modena」アーキテクチャに続く2つ目の車体設計だ。複数の車種で共通化し、コストダウンと新車設計の効率化を図っている。このプラットフォームは、運転席から荷室まで段差のないフラットな床、後輪まわりを詰めた四角く広い室内、最長1938mmのロングスライドレールといった特徴を持つ。
モーターも、車種やクラスに応じて性能を分けるために複数を開発している。シャオミが「HyperEngine」と呼ぶ自社開発モーターは、最高出力425kWの「V8s」、288kWの「V6s Plus」、275kWの「V6s」の3機種を展示。SkyNomadでは、N70 Proが210kWのシングルモーター、N70 MaxとN90 Maxは前210kW、後100kWのデュアルモーター4WDという組み合わせとなっている。
シャオミのモーターの特徴は高回転化にある。V8sは、業界最高クラスの強度を持つ独自の珪素鋼板と、ステーターとローターを立体的に冷やす独自のオイル冷却を組み合わせ、毎分2万7200回転という超高回転を実現している。
EVの動力源となるバッテリーもシャオミが主導して開発している。SkyNomadに全車採用された「Xiaomi Armor Scaleバッテリー」は、シャオミが製品定義とバッテリーパックの設計を主導し、バッテリーメーカーと協業してセルの設計にも関与している。18層の構造的な保護を備え、500J(ジュール)の底面衝撃にも耐える強度を持つ。気温55度の環境で満充電のセル1つが熱暴走しても、周囲に燃え広がりにくい設計だという。容量はN70 Proが52kWhのリン酸鉄リチウム、そのほかのモデルが76kWhの三元系リチウムだ。
「Xiaomi Titan Alloy」は、シャオミのEVの車体に使われる高強度の合金だ。アルミニウムにシリコン、マグネシウム、銅を加え、さらにレアアースやジルコニウムを添加することで、熱処理なしでも高い強度と粘り強さを持つ。9100トンの大型ダイカストマシンで一体成形することで、SU7の後部フロアでは72個の部品を1つにまとめ、溶接箇所を840ヵ所減らし、17%の軽量化を実現した。シャシーの高い強度もこの技術が支えている。
ボディーの安全性も、複数の素材を場所ごとに使い分けることで高めている。色分けして表示されたボディーフレームを見ると、衝突時などに乗員の命を守るため、強度に応じた材料が使い分けられていることがわかる。








































