●一つのスタンダードとなる
アップルの小売店は、世界で最も成功しているチェーンとして認識されており、どんな高級ファッションブランドの店舗よりも床面積あたりの売上高が大きいことで知られています。
しかしその小売店の能力を生かせなくなったのが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大であり、アップルとしては武器が利用できなくなる小さくない痛手だったと評価すべきでしょう。
その一方、アップルはすでにオンラインストアと小売店のシステムを統一しており、例えばオンラインで購入した製品を小売店で返品する、といった異なるチャネル間での共通サービスを実現してきました。
そのため、システム上に置いては、オンラインストアにより多めの比重をかけたとしても、これまでとあまり変化はないのかもしれません。
他方で、小売店には製品に触れる、選ぶ、学ぶ、といった体験がありました。まったく新しい製品を登場させたとき、小売店はその製品を知るための重要な役割を果たしてきたのです。
今年これまでに出てきた製品のように、既存製品の刷新であれば大きな問題は起きないかもしれませんが、まったく新しいデザインやカテゴリの製品を登場させるとき、一時的にその理解が浸透することが遅れる可能性もあるでしょう。
Apple Storeのオンライン拡充は、単に販売チャネルの移行だけではない、全く新しいチャレンジに直面しており、新しいスタイルやスタンダードの誕生に出会えるかもしれません。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
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